第3話 美咲、不安
「っく、あははははは」
美咲が「自分は生きている」という確証を得た瞬間、目の前の少年はいきなり笑い始めた。
「はは、そう言えばお前にはまだ生前の記憶が残っていたんだな」
少年は一通り笑った後、そんなことを言った。
「なっ、生前って、私が死んだみたいな言い方しないでよ!!」
少年が自分をからかっていると美咲は思う。
だけれど、その笑った少年の目が笑っていなくて、思わず美咲もムキになる。
「それにここはどこ!!
君、お姉ちゃんをからかって何が面白いの?」
早口に叫びながらも、聞きたいことを聞いてみる。
美咲は真剣に。
しかし、目の前の少年はそんな美咲の目をチラッと見て、クスリッと笑った。
「お前、あんまり俺のことを子供扱いするなよ。
あと、俺はからかってはいない。
ただ・・・・・・」
そう言いながら、また美咲の目を少年は見る。
「ただ?」
少年と目が合い、美咲もその言葉の続きを待つ。
その瞬間、少年はニッコリと今までと違う、少年らしい笑顔を見せ、
「ただ・・・・・・ただ、遊んでいるだけだよ」
と玩具を見るかのように美咲を見て言った。
「それって、結局からかってるだけじゃないっ!!!」
美咲はそう叫ぶと、「この少年とはまともに話ができない」と判断し、自力で家に帰ろうと思った。
そして勢いよくドアの前に行き、ドアノブに手を伸ばす。
そんな美咲を止めると思っていた少年は、さして美咲を止めることもなく、ただただ美咲の行動を見ているだけだった。
「君、そんじゃあサヨーナラ」
そう言いながら、美咲は怒りながら部屋を出る。
パタンー。
美咲が出て行った後の部屋。
少年はドアをジーと見つめる。
クスリっ。
「あーぁ、出て行っちゃたよ。
どーせ、俺のもとに帰って来なくちゃならないというのに・・・・・・。
だって、美咲はもう俺のものだもの」
少年のクスクスとした笑い声が閑散とした部屋に響き渡っていた。
「あー、腹が立つよあの子」
そう言いながら美咲は歩いていた。
先ほどのアンバランスな部屋を抜け出し、家に帰ろうとしたけれども、屋敷を出るのに一苦労、門を探すのに一苦労。
現在、美咲はどこかわからない雑木林を歩いていた。
「ここどこだよぅ〜。
どんだけ広いんだよぅ〜(泣)。」
そして、早くも泣きそうになっている。
「さっきから人っ子一人出会わないのは何故なんだ!!
っていうか、私、まだメイド服のままだし・・・・・・。」
メイド服のままでは家に帰れない(根性でどうにかなりそうだけれど・・・・・・)。
美咲の来ていた服はたぶん初めにいた部屋だろう。
だけど、美咲は無造作に出口を探していたため、元いた部屋の帰り方さえもわからなかった。
「あぁ、誰でもいいからいないかなぁー、人」
そう言いながら、美咲はてくてく歩いていた。
てくてく歩いていると・・・・・・
「い、いたっ!!
やっといたっ!!人ォォォォーーーー!!」
ちょっと離れたところに同年代ぐらいの少女を発見した。
美咲は走って駆け寄る。
すると向こうの少女も足音に気付きこちらを振り返った。
「あ、あの、もしかして、こちらのお屋敷の人ですか?」
美咲がそう聞こうとして、呼びとめた時だった、
「ターゲット製造番号0103、コードネーム“MISAKI”を発見。
製造番号0100、コードネーム“TIHARU”戦闘開始を宣言する。」
そう言った黒髪の少女に銃を額に突きつけられたのは。