君の運命は一つだけじゃないんだよ
僕は言った。真由美の運命を変えるのは僕だと。
僕がこんな理不尽な運命を変えるんだ。
「君が真由美の運命を変えるのなら。僕が変えたって同じことだ」
男性はそう言った。
「そうだろう?中学生の時の僕。」
「・・・!!」
真由美を見るとあまり驚いた様子はしていない。
僕は男性の言葉で理解ができた。この男性は未来の僕だと。
真由美は知っていたのかな。この男性が僕だということを。
「どうして・・・。僕が真由美を・・・」
僕が真由美を殺す理由などないはずだ。なのにどうして。
未来の僕はこう答えた。
「それが運命だからなんだよ」
運命・・・そんなの違う。
「すべてを運命の一言で片付けるなんて・・・そんな理由で真由美を殺すなんて・・・それでも僕なの!?」
喉が潰れる勢いで叫んだ。
「優・・・」
「未来の僕だって真由美が死んでたくさん悲しんだでしょ? それなのになんで!」
「悲しんださ! だけど彼女が今死ななければ未来は変わってしまうんだ。彼女がこのまま生きたら僕が過ごした時間はどうなる? 全てが変わって大変なことになるんだ!」
未来の僕はすべてを吐き出した勢いで言った。
「変わったっていい! 僕が真由美の運命を変える・・・決めるんだ。そんなの知らないよ!」
未来が変わったっていい。どうなったっていい。
ただ。ただ僕は・・・
「僕は真由美といたいんだ!」
「優・・・ありがと」
真由美は僕の言葉を聞いてそう言った。
「・・・わかったよ。中学生の時の僕。諦めたよ、真由美を大事にするんだぞ」
「未来の僕・・・」
そう言って未来の僕は僕たちの前からいなくなった。
そして僕も未来に帰ろうとした(その前にどうやって帰るの?)時。
「優、本当にありがとうね」
真由美は笑顔で言ってきた。
「うん。真由美。未来でまたあおうね」
「待っててね」
「うん。待ってる」
「こら優!おきなさいー。真由美ちゃんもうきてるわよ」
その言葉を聞き僕は大急ぎで階段を駆け下り、玄関の扉を勢いよく開けた。
「優おはよう。おまたせ。ちゃんと待っててくれた?」
真由美が生きてる。ここは過去なんかじゃないんだ。
僕は嬉しかった。また真由美と過ごせる。そう思うだけでとてつもなく嬉しかった。
僕は明るい声で、言った。
「待ちくたびれたよ真由美。お帰り」
「ただいま」
ここで真由美にお帰りと言ってあっていたかなんてどうでもいい気がした。
真由美が帰ってきてくれた。それだけでなにもかもがどうでもいい気がした。
僕の彼女が死んだ。僕は過去に行き、生き返らした。というより運命を変えた。
人には運命がある。だけどそれを変えることができる。
そう運命は一つじゃないってことだ。
「行こっか真由美」
「うん」