君は僕との出会いを覚えていますか?
気がつくと僕は、気を失っていた。
『久しぶりに彼女に会えてどうだった?』
いつの日にか聞いた声がした。
『死んだ人は普通生き返らない』
あぁ、そうだ、真由美に伝えたんだ。それで・・・
『君は彼女に生きてほしいかい?』
真由美は自分は死ぬ運命にある。だから真由美は死ぬと答えた。なら僕は恋人として、それを見届けなくてはならない。だけど、僕はやっぱり真由美に生きてほしい。
『なら、君はもう少し考えなくてはならない』
「夢・・・?」
目を覚ますと僕は自分の部屋にいた。
カレンダーに目をやると、
8月・・・あぁ、そうか。戻ってきたのか。
僕は誰もいない部屋で一人つぶやいた。
「君は僕との出会いを覚えてる?」
あれは中学校の入学式だったよね・・・
新しい制服を着て、僕は中学校の門をくぐり抜ける。
緊張しているせいか、うまく歩けない。よろよろと歩き、ついには転んでしまった。
周りのみんなに笑われ、恥ずかしい。
だけど、一人だけ僕に手をさしのべてくれた女の子がいた。
「大丈夫? たてる?」
それが真由美だ。
真由美は優しく手を貸してくれた。僕は一目惚れをしたんだ。。
それから二カ月後。僕は思い切って告白をした。
「君のことが、す、す、す、ききききです。つ、つきききあっててください」
緊張していてうまく言えなかった。
だけど、真由美は優しく、
「いいよ」
っと答えてくれた。
それからは二人で学校にいったり、遊んだりした。
あぁ、そうだ。こんなこともあったっけ。
ある日二人でデートをしているとき、夜景がものすごく綺麗で僕は、
「うわー綺麗」
と言った。
すると真由美は思いがけないことを言った。
「全然綺麗じゃない」
僕はえ?と言った。続けて真由美は、
「私がこの世界で綺麗と思うものは一つだけ。それは、好きな人と過ごした時間。それがどんな夜景よりも、どんな宝石よりも、キラキラしていて綺麗」
と、真由美は言った。僕は嬉しかった。
時々真由美はもしもの話をしたっけ。
例えば、
「もしも私が留学したらどうする?」
と聞いてきた。
僕は、
「何年かかっても待ってる」
と答えた。
ほかには、
「もしも私が死んだら優は悲しむ?」
と聞いてきた時もあった。
僕は真剣な顔で、
「あたりまえだよ」
と答えた。
真由美は笑いながらこう言った。
「優ったら真剣になっちゃって」
なんか真剣になったのが馬鹿らしく思えた。
真由美はその後、
「死なないよ。たとえ私が死ぬ運命にあっても。絶対」
と、僕に言った。