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鴉の子  作者: 詠城カンナ
第四部 鴉の王
54/100

お久しぶりです!

とりあえず、鴉の王は書き終えました〜!

随時公開していこうと思いますw






******





身体が痛い。

手足が痺れ、唸る。

その痛みを外に逃がすよう、首をのばす。

黒い煙が身体を覆い隠し、宙に浮く。

足下で人間どものざわめきを聞いた。




「なにあれ!」

「喜助ッ」

『人型が終わりやがったのか』



蒼於の舌うちを聞き、ゆるゆると頬があがる。

ああ、そうだ。

やっとオレサマは本来の力を取り戻せる。



再び加世と目を合わせたとき、彼女はその目をこれでもかと大きく見開き、硬直していた。

『これがオレサマの本当の姿だ』

ニッと笑う。

加世はきゅっと唇を噛みしめると、しぶとく言いつのった。

「どうでもいいわ。あなたがどんな姿であろうと、喜助には変わりないもの」



相変わらず甘い。

その甘さが時に命取りになるというのに。

おれを助ける?

どんな姿だって構わない?

馬鹿いうな。



『オレサマは貴様の助けなど必要ない。貴様はただの邪魔にしかならない。下がれ』

「――でも」

「加世、こい」

まだ食い下がろうとする加世に、夜呂が声をかける。

あの小僧も、すこしは利口だということか。




鳥の体はすばらしい。

すべてが軽いのだ。

翼をビュッとひとつはためかせれば、身体はぐっと一気に宙に浮く。

人間どもが見上げる。

おれは見下ろす。

たまらない征服感に包まれる。


本来、鳥は色を区別することができないという。

だから光のない闇では、なかなか思うようにものが見えない。

けれど、屋敷の烏はちがう。

おれたちにとって、闇こそが光で、すべてだから。




『さぁ来いよ、卑怯もん』

不敵に笑って、つり目の烏を誘う。

蒼於はすぐにおれと同じ高さまで舞い上がってきた。

『後悔するが、いい』

カッと目を見開くと、即座に攻撃を開始した。

こいつの目玉は、まずいかな、などと思いながら。

蒼於は表情ひとつ変えず、避けては反撃してきた。




「かっ、かかれぇー!」

「お守りしろォッ!!!」


眼下で人間どもが戦闘を開始したのがわかった。

夜桜たちは軍を呼び寄せ、おれたちが闘っているのに便乗して攻撃を仕掛けたらしい。

けれど、夜呂方も抜け目はなかった。

すぐに高安が気づき、配下を応戦させた。

どうやら忍を連れてきていたらしい。

すぐにどっと武器を持った人間たちで埋め尽された。

金属どうしがぶつかりあい、唸り声や悲鳴が響く。

ぞくぞくとした高揚感が背中から上がってきた。

思わずニヤリとほくそ笑んでしまう。




『これじゃ、目玉が喰いほうだいだなあ』



血の海。

屍の山。

ほうら、そこはマヨナカさまの楽園。



蒼於が威嚇し、嘴を突き刺してくるのをひらりと避け、クックと笑う。

『時間はまだたっぷりある。そう急くな』

『急く?』

突如、蒼於が動きをとめ、こちらを見た。

その顔は――笑っていた。

『おまえ、本当にお気楽な奴だな』

今度は蒼於が不敵に笑う。


どういうことだ?


『教えてやろうか。おれは単なる時間稼ぎさ』

勝ち誇ったように高笑いする蒼於。


謀られた?



足下でさんざめく人間どもの声も、鉄のような血の臭いも、なにもかもが消えたような錯覚を覚える。

風は止み、ただ人の熱気でむっとする空気だけが漂う。


時間稼ぎ?


こいつは単なる時間稼ぎで、本当の目的は、兄の玄緒にあるということか。

なにをするつもりだ。

焦るな、と自分にいい聞かせる。

本来、おれはめったなことじゃなきゃ動揺すらしない質なのに。

それなのに、なんだ。

妙に不安が押し寄せてきて、ゾッとさせる。


これは勘だ。

野生の勘。


不吉な予感に支配され、どうしても戸惑ってしまう。

では、なにに?



どうすればいいかは、すぐにわかった。

おれは手加減なしで、奴の腹に喰らいつく。

いかなりのことに驚いたのか、蒼於はまったくといっていいほど防御ができていなかった。

低く悲鳴をあげ、苦しげに悶える。

構わず、おれは奴の喉元に嘴をそえた。


『なにをした』

これまでにないほど、低く冷たい声が出た。

蒼於が思わず震えるのがわかり、満足する。

『本来の目的はなんだ』

さらに嘴を喉元に突き刺すように押し付ける。

すると、やっと蒼於が口を開いた。

負け惜しみのごとく、薄ら笑いを浮かべながら。


『……もう遅い。とっくに計画は実行されているんだ』

蒼於の黒い腹が出血しはじめ、てらてらと光っている。

『おまえ……の……大切なものを、奪うためにな』

表情をゆがめながらも、蒼於はニヤリと笑う。

『気づいていないとでも思ったか。所詮おまえは……人間なんだ。成彰は、すべてわかっていた……』

息を荒くして、蒼於は目を細めた。

意識が薄らいできたらしい。



成彰。

貴様にはまだ、復讐をし終えていないぜ。





『あばよ』

言って、おれは力なくぐったりする蒼於を蹴落とした。

くるくると緩く螺旋を描き、烏は落下していく。

その黒い点が地につくまえに、おれは方向を変えて飛び立った。







――この不安は。

沖聖、おまえか。








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