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ヒカリ

作者: 安浦
掲載日:2015/05/08

「ひかりが好きだよ」


そう言われて、私たちは絶対別れないって信じて疑わなかった。


愛して、愛されて、こんな世界が素晴らしいってことに気付いてしまった。


本気で結婚しようなんて話までしていたくらい。



だけどそれは…。


遠い、遠い昔。

どこにでもよくある初恋の話だ。




私の初恋は中学3年生のとき。


初めての彼氏が出来た。


彼氏の名前は光。


私の名前もひかり。


学校は違っていたけれど、塾が一緒で、同じ名前ってことで仲良くなっていった。


気が付けば私は光を好きになって、光も私を好きになった。


初めての彼氏。

初めての全てを私はひかりに捧げた。


「…好き」


光はいつも、キスをしたあとそう言って私を抱きしめる。


その声のトーンがとても心地よくて、私は光にぎゅっとしがみついていた。


「夏期講習めんどくさいね」


「俺らこれでも受験生だから仕方ないでしょ」


塾の夏期講習は毎日あって1日の大半を塾で過ごしていた。


「でも光に毎日会えるのが楽しみだなぁ」


受験生だというのに、私は勉強より光だった。


受験校も、特に無理する予定もなく推薦狙いだったおかげで私は恋にうつつを抜かしていた。


「ダンス部の最後の大会終わったら、塾休みの日デートしようよ」


きっと光も私と一緒で勉強より私。


でも、小さい頃から習っているダンスへの熱意はすごくて、私はきっとダンスには負けていたのかもしれない。


「光は大会終わったら引退だね」


「あぁ。でもダンスは続けるからね」


とにかく、光はダンスが大好きだったんだ。




そして、光も大会を終えて、塾が休みの日がやってきた。


「原宿久しぶりだー!」


久しぶりのデートに私は浮かれていた。


「ひかり、手」


「ん…」


私たちは強く手を握って竹下通りを歩く。


「光!これかわいいよ」


私はミサンガを指差した。


中学生の私たちは、アクセサリーなんて買えないのもあったが、興味も特になかった。


「おー。いいねぇ」


「光、おそろいでつけようよ。で、受験一緒に乗り切ろう?」



私たちはおそろいのミサンガを買って、付けることにした。


私はそれが嬉しくて、たまらなかった。


きっと、光もそうだったと思う。


おそろいのミサンガをつけて歩いていると、見知らぬおじさんに声をかけられた。


「きみ、ちょっと時間ある?」


おじさんに声をかけられ私たちは足を止めた。


光はそのおじさんを不振に思ったのか、私より一歩前に出た。


「何ですか?時間ないですから」


そう言って、光は私の手を引っ張って歩いた。


「待って待って!ね?」


おじさんは名刺を光に差し出した。


「…何ですか?」


光はその名刺をじっと見た。


その時の私はただそんなやりとりを見てるしかなかった。


「きみ、いくつ?高校生?」


「俺?14です。中三ですけど」


「お!いいねー!」


このおじさんって…。

まさかと思った。


だけど…。


「…芸能界って興味ない?」


「はぁっ!?俺?!」


「きみ名前は?」


光が芸能界にスカウトされた。


内心、嬉しくなかった。


私は独占欲の塊で出来ていたようなもので、光が遠くへ行くとか考えられるわけがなかった。


「光行こうよ!」


私は光の腕を思い切り強く掴んで言った。


「きみ光くんって言うの?これ…」


おじさんは名刺を光の手に強引に渡してきた。


「ダンスとか歌とか興味ない?歌ったり踊ったりする仕事!アイドルなんだけど、どうかな?」


アイドル?

…光が?


でも、光にはダンスという言葉が頭に残っていたのだろう。


私は光の腕をぎゅっと掴んだ。


「…ひかり?」


光は心配そうに私の顔をのぞき込んでいたんだ。


おじさんは簡単に仕事の説明などしていなくなった。


光は何だか、混乱しながらも私にはキラキラして見えていた。



ぎゅっと掴んだ手にはお揃いのミサンガ。


「これ…勝手に切れるまで外したらダメだからね?」


私は光に言った。


光はニコッと笑って私の手を強く握り返した。




また私たちは塾漬けの日々が始まっていた。


塾が終わった後、いつものように私たちは塾の近くの真っ暗な駐車場でキスをする。


「ひかり…好きだよ」


その声に私は気持ちよくなって、光にしがみつく。


「ひかり…この前の…あったじゃん?」


「この前?何だっけ?」


光は言いにくそうに話し始めた。


「スカウトの…やりたいなって思った…」


「…え?」


光からのキラキラ光る言葉に私は胸が押しつぶされそう。


「光、それマジで言ってんの…?」


光は頷くだけ。


「あー…。そうなんだ。へぇ…」


応援の言葉が出てこない。

急に光が違う世界の人に見えてきて、怖くて、不安で、どうしようもなくなるのに。


「…で…寮生活になるし、高校も芸能コースのとこに入ることになった…から」


「あぁ。そうなんだ…へぇ…」


このあとのことは正直よく覚えていなくて、ただ泣いて、泣いて…。


その後の私たちなんて、初恋には珍しくない自然消滅みたいな感じになった。


お互い別れは切り出せなかったけれど、付き合っていけないこともわかっていた。



それから二年後。

女子校に入った私たちの間では常に恋の話、アイドルの話で持ちきりだった。


「ひかりはこの中だったら誰?」


友達はアイドル雑誌を持って私の元までやって来た。


「あー…」


みんなは知らない。


大切すぎて誰にも言わない。


「やっぱ光かっこいいよね!ダンスめっちゃうまいし!」


勝手に光は人気者になって、私を捨てた?


でも…。


「光っていつもこのミサンガしてるよね。ひかりのと似てない?同じ?」


“切れるまで絶対に外さない”


「いや、違うでしょ?」


あの頃の約束。


好きで、好きで、それだけが全てだった初恋の話。


初恋なんて、みんなそんなものでしょ?


光が好きで、仕方なかった。


“ひかりが好きだよ”


その声、しがみついた感触、手を繋いだ温度。


ずっと消えないまま、私はまたいつか誰かと恋に落ちる日が来るのだろう。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


初恋は忘れられないものですよね?

思い出すだけで、ぎゃーっと叫びたくなるような恥ずかしいことまで思い出してしまう(笑)

でも…あの頃の自分はそれがベストの自分だったのだろう…(-_-#)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒカリ読みました! バットエンドで終わるかなと思いきや エピローグ部分で素敵な展開があって救われました! 思わず今後の展開を妄想してしまいました。 [一言] 短編小説を書く時って プロ…
2015/05/08 22:43 退会済み
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