級友たち
「ごちそうさまでした」
そう言って、孝哉は食べ終わったお皿を下げる。
「あら孝哉さん、食器を片付けるくらいなら私がやるのに、偉いですね」
「いや、一人で食事することが多かったので、癖になってるんですよ」
和泉に誉められた孝哉だが、普段からしてることであるためか、軽い口調で返す。そして、そのやりとりを見ていたみのりも、食べ終わった後にお皿を下げた。
翌日もみのりと登校した孝哉は、教室に入って着席すると、肩を叩かれる。
「おはよう、氷室くん!」
「なんだよ、朝から元気だな吉永」
肩を叩いて挨拶をしてきたのは吉永であった。吉永は孝哉に部活を尋ねてくる。
「オレは野球部に入ったよ」
「ま、マジか?まさか、髪のことでいじられたらやけになって……」
孝哉の返答に吉永は驚いている。
「バカかお前は、元々中学では野球をやってたんだよ」
驚きすぎている吉永に向けて、孝哉は冷静に理由を話す。それも特別ではなく、当たり障りのない内容で。
「な、なるほど。ちなみに僕は演劇部だよ、なんとみのりちゃんt……いてて」
吉永の方を見ると、吉永は女子に耳を引っ張られていた。
「吉永、昨日掃除の時間。当番だったのにいなかったでしょ」
孝哉が目をやるとそこには、メガネと三つ編みが印象的な吉永と同じくらいの背丈の女子生徒がいた。
「わ、悪かったよ委員長。当番まだ把握してなくて」
吉永は女子生徒を委員長と呼んで弁明している。
「とりあえず、今週は当番だし、当番なのも教えたからね」
委員長と呼ばれた女子生徒は吉永の耳を離してその場を立ち去る。立ち去ったのを確認してから孝哉は小声で吉永に質問する。
「なあ、今の誰だっけ? オレまだクラス全員を覚えてないんだけど」
孝哉の問いに吉永が答える。
「あいつは梶谷春香、このクラスの委員長だよ。ちなみに同じ中学なんだけど、昔からあんな感じだ」
「なるほど、だからああいう態度だったのか」
吉永の返答で納得すると、チャイムが鳴り、学校生活の一日が始まる。
授業後のホームルームが終わると、孝哉はみのりに声をかけられる。
「じゃあ孝哉、私部活いってくるね、孝哉も頑張って」
そう言って、孝哉の元を去ろうとするみのりだが、孝哉が呼び止める。
「吉永が掃除で遅れると伝えといてあげてくれ」
「うん、分かった」
そう言って、みのりは演劇部の部室へと向かっていった。孝哉は再び、女子生徒に声をかけられる。
「あ、私も監督に掃除で遅れると伝えておいてください」
「ああ、分かった……って君は?」
唐突に言われた一言に思わずノリそうに孝哉だったが、冷静になって相手に尋ねると、女子生徒は名乗った。
「私は星野皐月、野球部のマネージャーです」