訳ありアパート
神楽達が住む、ひまわりハイツというアパートに到着したのは午後の7時を回った頃だった。
学校を出たのがだいたい3時頃だったので4時間近くさ迷っていることになる。
それもこれも神楽の目の前を優雅に歩く、
一というバカのせいだ。
仕方なしに案内を頼んだ神楽だったが正直これは今年に入って1番の失敗だった。
一は途中大幅にコースをそれ、町案内を始めた---勿論神楽はたのんでいない。---挙げ句みちが分からないと騒ぎだし、近くを歩いている老人にみちを聴くとなんとあるいて50分はかかるばしゃまで離れてしまっていたのだ。
「お前、人からウザイとよく言われるだろ…。」
神楽は既に一に対して悪態をつくことに抵抗を感じなくなっていた。
「…よくわかるな!でも、いっつも何でそーおもうんだ?って聴くと誰も答えてくれないんだよ!お前は答えてくれるか?」
「…」
なかなか自自分を客観視出来ないのもこまったものだ。
「おー、もしかしてお前らが今日からここで契約してる新入居者か?」
一の何でなんで攻撃が始まろうとしていたまさにその時、20代半ばくらいのチャラそうな男がはなしかけてくる。
「あー、もしかして、ひまわりハイツのオーナーの方ですか?」
話の内容から神楽がそう問いかける。
先程まで悪態をついていた時とはうってかわって無表情で硬い声だ。
「もしかしなくともそうだ。ちょっとお前らに話しがあったんだ。付いてきてくれ。」
そう言われ神楽は警戒の表情を作る。
「おっと、拒否権は無いぜ。到着予定時間から何時間待たせたとおもってる。」
オーナーはわざとらしく不機嫌そうな表情を作った。
仕方なしについていった先は管理室の様なところだった。
「お前らはこの物件を紹介されたときやけに安いなとかって感じなかったか?」
オーナーが唐突に聞く。
確かに大きさ、きれいさ、交通の便を考えると借りるときの値段はかなり安かった気がする。
その表情を読み取ったのか、オーナーはまだ2人が答える前に口を開く。
「ここはな、色んな意味での訳ありさんのために用意された、ちょっと変わったアパートなんだよ。
勿論、こんなアパートを管理している俺もわけありだ。」
ここでオーナーは1度口を閉ざす。
2,3秒の沈黙が流れる。
「つまり、ここに送られてきたお前らも相当な訳ありってことになる。
そこで、選択肢を2つ。
1つ ここの住人になることをやめる。
1つ お前らの訳とやらを簡単に説明し、ここに住む。」
与えられた選択肢は、2人にとって衝撃的なものだった。
ポカーンと呆けた2人の表情にオーナーは笑って言う。
「ま、安心しろ!きげんは1週間やるさ!」