迷いと驚き
高校生活1日目は無事終了した。
まぁ、1日目から問題発生でもすれば神楽の心は折れそうになっていただろうが…。
だが、彼は少々混乱もしていた。
高校に入ってからは息苦しい視線と悪意から逃れるためにも目立たず、親しい友人も作らずにいる予定だった。
なのに、今日は悪意とは違った違和感のある視線を数多く感じたし、隣の奴には突然一生の友宣言をされた。
神楽は知らずにため息をこぼしていた。
誰1人として神楽対して悪い感情を持っていなかった、寧ろ好意だらけだったといえる。
しかし、神楽は悪意に対しては人1倍敏感であるのに好意に対しては人3倍位に鈍感であったのだ。
そんなこんなで今日から住み始める予定となっているアパートに向かっていると、ふと自分が記憶した地図と違う道を出た歩いていることに気づく。
「しまった。誰かに道を聞かなきゃ。」
キョロキョロと辺りを見渡すと前方に自分と同じ制服をき着た男子生徒の姿が見えた。
「あの、すみません!道に迷ってしまっ…」
この時神楽は少々焦っていて相手をよく見ていなかった。
おそらく、相手を正しく認識していれば声をかけるのをためらっただろう。
そいつは一という変わった名字とやたらと明るい性格の持ち主で、今の神楽の考え事の1つだった。
「おー!達海じゃないか!」
既にファーストネームを呼んでいる馴れ馴れしさだったが声をかけてしまったので仕方がない。
「実は高校からはここら辺のひまわりハイツというアパートに住むことになったんだが道に迷ってしまったんだ。」
表情を一切動かすことなく神楽が
そえ説明する。
「え、お前もアパート生活か?」
お前も、と言うことは一も親元をは離れアパートか何かで暮らしているのだろう。
「ああ。」
短く素っ気なく呟く。
「そーかー!まぁ、安心しろ!同じアパートのよしみで連れてってやるよ!」
「!!!?」
ここへ来て初めて神楽の表情が衝撃でピクリと動いた。
一は満足そうに笑っておりその事に気付くことはなかった。