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Noisy Toy Present!  作者: なろうサンタクロース協会
Noisy Toy Present!
28/30

混沌なるXmas@MONDO


「はいっ、というわけで全員集まったということなので早速始めたいと思います! 2年B組クリスマスパーティーin家庭科室!!」

「こらっ、勝手に仕切るなモブキャラが! まだ全員にジュース行き渡ってないでしょうが!」

「え、そうなの? ……って誰がモブキャラだって!?」

「アンタに決まってんでしょうが。特別人気があるわけじゃないのに、頼れる男アピールしたくって仕切りたがる奴、分かります分かります(笑)。ぷぷっ」

「う、うっせえな委員長! そんな事言ってっからモテねーんだぞ!」

「アンタには言われたかないわよ」

「はぁ……委員長って顔もまぁまぁ可愛いし、胸もデカいのにモテないのは、その性格だと思u……ちょっと待って! 包丁はヤバイ!」

「……ぶっ殺す…………!」

「――ま、まぁまぁ桜井さん、落ち着いて。そ、そんなことよりホラ。全員にジュース行き渡ったみたいだよ。乾杯の音頭はクラス委員長である桜井さんの役割でしょ? みんな待ってるよ」

「風待ナイスフォロー!」

「……あらホントね。あの馬鹿はあとで絞めるとして……」

「ひぃ……!」

「――コホン、それでは……かんぱーーーーい!!」

『かんぱ~~~~い!!』


 ――12月25日。

 まぁ……クリスマス。

 場所は、とある学校の教室。

 時刻は、午後7時。

 集まったのは、我が級友ども40人+担任の女教師1人、計41人。

 そして行われているのはクリスマスパーティーだ。


 最初に言いだしたのは、先ほど殺人を起こそうとしていた、そして現におたまを振り回しながら絶賛お怒り中の、クラス委員長――桜井朱莉(さくらいあかり)さんだった。武器が先程と違って、包丁からおたまに変わっているのは理性のおかげか。

 桜井さん曰く、「クラスに(はびこ)るリア充どもが、クリスマスデートとかいうイベントに参加できないように、クラスでクリスマスパーティーをしてみんなを拘束するのよ」が、このパーティーの目的らしい。周知の事実ではないが、何とも不純な理由なのだ。


 俺は風待涼(かぜまちりょう)。このクラスに属する普通の男子高校生だ。

 そして、クリスマスパーティーは進行していくのだが…………?



+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー



「それではみんなー、持ってきた食べ物をお皿に出してねー!」


 非リア充推進派、桜井さんの乾杯のあと、俺たちは各々(おのおの)が持ってきた食料を披露し始めた。

 今回のクリスマスパーティーはクラスの集金から食べ物を買うことができなかったので、それぞれがお菓子や食べ物を家から持ってきたり買ったりして、みんなで食べ合う、というのがルールになっていた。

 なので俺も自分の持ってきたはずの、お菓子を出そうとしたのだが、



「……………………ん?」



 カバンの中に入れといたはずのスナック菓子が入ってない……。

 そのかわり、俺の知らないものが入っていた。


「ペットボトルが1本……。しかも1リットルのやつが」


 ジュースらしきものが入っていた。


「…………」


 俺はこんなものを入れたような記憶は毛頭ない。

 確かに家を出るときにはカバンの中にスナック菓子が入っていたはずだ。

 何だかカバンが重いなー、とは思っていたが、こんなものが入っていたとは。どうして自分は気づかなかったのだろうかと思う。

 ペットボトルを出し、中身を見てみる。

 ラベルは付いてない。しかし、中に入っているのは黒色の液体だったので、おそらくコーラだろう。


「……ん?」


 そこであることに気づく。

 ペットボトルの側面にセロハンテープでメモ用紙がくっついていた。

 読んでみると、



『涼くんへ

 わたしの涼くんがクラスのメス豚どもと一緒にパーティーするなんて!

 姉であるわたしを独りぼっちにして!

 恋人であるわたしを差し置いて!

 ああ、涼くん……! わたしはとても寂しいです。

 寂しくて家に放火しちゃいそうです。

 家が大きなロウソクになっちゃいそうです。

 なのでできるだけ早く帰ってきてください。


 ……わたしが我慢できなくなる前に。

           姉兼恋人 風待美鈴(かぜまちみすず)



「……何なんだよこれは!」


 俺は紙を机に叩きつけた。

 このペットボトルの説明かと思っていたこの紙。

 ブラコンである姉からの手紙でした……。

 というか、最後の1行が怖いんだが。早めに帰ることにしよう。


「あれ? 裏がある……」


 そして裏にも何か書いてあるのがちらっと見えた。

 読んでみると……、



『追記

 これはコーラです。

 使ってください』



「……追記の方が明らか大事だろ!」


 絶対にあの本文はいらない気がする。

 まぁ姉のブラコンはみんなの知られているので、この紙を見られても問題ないが、「メス豚」とか失礼な表現が書かれているので見せられたものじゃない。


「おーい風待! そのコーラ、お前が持ってきたのか?」

「ああ、そうだけど……」

「助かったよ。なんかみんなお菓子ばっか持ってきていて、ジュースが圧倒的に少ないんだよ。その中での貴重な飲み物を持ってきたのがお前ってわけだ。ナイス風待」

「そうなのか……ハハッ。じゃあこれ渡しとくな。みんなで飲んでくれ」

「おおサンキュー!」


 結局、これで良かったのか……な……?




 事件が起こったのはこの後すぐだった。

 俺が友達たちとパーティーを楽しんでいると、ポケットから着信を告げるメロディーが聞こえた。


「――おっと、電話だ。すまん少し席外す」

「あのお姉さんからじゃねーかー? 早く帰ってきてー、とか」

「可能性はあるが、もしそうなら即行通話きってやるがな」


 適当に話をして席を立つと、廊下にでて携帯の画面を見る。

 着信相手は、案の定、姉。


「……」


 出るべきか、出ないべきか。


「……ちっ」


 何か大事な用事かもしれないので出ることにする。

 でも、ふざけた目的でかけてきたのなら直ぐさま切ってやろう。


「もしもしー」

『ふわぁぁぁぁぁ! 涼くんの声だぁぁー!』

「うっせぇよ! それぐらいでうるさいんだよアンタは!」

『だってわたし今1人なのよ? お家で1人、とても寂しい……』

「はぁ……、で? 要件は?」

『そうそう! 大変な事になっちゃったの! というかなるかも!!』

「はあ!? どういうこと?」

『あのね……。涼くん……絶対に怒らない?』


 そんなの聞いてからじゃないと判断できないと思うのだが。


「いや分かんねーし」

『誓って! 怒らないって!』

「いや、だから聞いてからじゃないと分かんないから」

『お願い誓って!!』

「…………分かった」

『よし……。あのね?』

「うむ」



『涼くんに渡したコーラにイケナイ薬が入ってるから飲んじゃダメよ!』



「はあ!? イケナイ薬って?」

『――媚薬(びやく)


 ………………。

 やべえ……!! マジのイケナイ薬だ!!


「……」


 俺は携帯を廊下に投げかけたところで思いとどまった。


「お前ふざっけんなよ! もうみんなにジュースは行き渡ってんだよ! どうするんだよ!」

『ふぇ~ん! 怒らないって言ったのにぃ~』

「おいクソ姉! 何で媚薬が入ってるか説明しろよ!」

『だからわたしが涼くんに飲ませようと仕込んどいたのを間違えて渡しちゃったの……』

「死ねよ! もうお前死ねよ!!」

『ごめんなさ~い』

「どう責任とんだテメェ! 誰かが飲んじまったらよォ!」

『それは……』

「くそっ……!」


 俺は乱暴に通話を切って、パーティー会場である家庭科室に向かう。

 あのジュースを渡してからすでに10分ほど経っている。もう誰かに飲まれていてもおかしくない。

 それが飲まれたら、危険な展開に発展するであろうことは想像に(かた)くない。

 なんにしろ、早くあの魔のコーラを回収しなくては……!


 家庭科室に入って(くだん)のコーラ探すと、長机の1つにさまざまなジュースがおいてあるのが確認できた。

 しかし黒の液体らしきペットボトルは4本。内、1本が俺のコーラというわけだ。

 減っている量を見る。なんと全てが半分ぐらい減っていた。


「くそッ! 1本ずつ飲めよな!」


 しかしこんなところで嘆いてもしかたがない。とりあえずこの4本を回収して、各地に拡散されたであろうコーラの駆逐に向かうことにする。


「…………あれ?」


 しかし俺は周りを見て唖然とした。

 俺を除く参加者の人数は40人。そのほとんどがコーラを紙コップにいれていた。確かに、炭酸が飲めない人は少なくないが、ざっと数えただけで25人ほどがコーラを所持している。その中でも4分の1の確率で俺のコーラを引く。大体、6人が媚薬コーラを飲むわけだ。


「…………」


 はい詰みー。

 まぁでも仕方ない。数人には犠牲になってもらうしかないが、被害を最小限に抑えるのがこのコーラを輸入した俺の任務というものだろう。

 ということで適当な理由をつけてコーラを持っている級友から、片っ端からコーラを回収していく。毎回、「このコーラ飲んだ……?」というのがドキドキしすぎる。順調に寿命が縮まってそうだ。

 でも今のところ、飲んだという子達に異常はなさそう。つまり、残ったコーラに媚薬が。



 しかし俺の健闘虚しく、1人目の犠牲者が出てくることになる。



 その後もコーラを駆逐している最中……。


「――ねぇ、風待くん……」

「……あ?」


 横から俺の服の袖をツンツンと引っ張る手が。


「なに……やって、る、のかな?」

優木(ゆうき)さん……!」


 クラスで一番美人とされる女子――優木奈央(ゆうきなお)さん。茶髪の髪をポニーテールにまとめ、大きなオレンジ色のリボンで縛っている。小柄な体の割にはグラマラスなスタイルも人気の理由だろう。

 ……が。


「……はぁはぁ……何だかこの部屋暑くない? わたし服1枚脱ごっかな……」

「いや優木さん、いま12月ですよ!? そんなに暑くないですよこの部屋!?」

「……はぁ、はぁ……。どうしちゃったんだろわたし……」


 いつものおしとやかな彼女ではなくないか?

 まさか……!


「優木さん、ちょっと質問に答えて。あのさ、コーラ飲んだ?」

「んぅえ?」

「なんて?」

「んんんー……。飲んだ、かも……」


 感染確定。

 すぐさま駆逐に向かう。


「そのコーラは何処に!?」

「ん? なぁに? 風待くんはわたしが飲んだコーラが飲みたいのぉ~?」


 ちげーよ! これ以上あなたみたいな犠牲者を増やしたくないんだよ!


「いや、そういうわけじゃなくて! 間接キスとかじゃなくて!」

「んふふ……間接キス、ねぇ……」

「いやホントだって! そういういかがわしいことは考えてないから!」

「はぁぁぁ……。ふふっ、えい!!」

「痛っ!?」


 とろーんとした瞳を俺に向けながら何を考えたのか、俺を足払いでスコンと転がす優木さん。背中から盛大に転がされた俺は何が何だか分かんない。


「――ん? なんで俺は転がされたのかな……?」

「はぁはぁ……、そぉーれぇーはぁー……」

「ひぃ……!」


 あろうことか仰向けに寝転がった姿勢の俺の上にまたがり、俺の腰に座る彼女。


「(あっ、軽……)」


 ――っ、じゃねぇよっ!!

 やばいやばいこの体勢は! 周りに見つかったら誤解は免れないし!


「ちょっと優木さん!」

「はぁはぁ……、間接キスじゃなくて――本物のキスしてみない……?」

「ちょっっっとぉぉ!」


 そのまま前に倒れる優木さん。目の前に彼女の顔、明らかに平生(へいぜい)とは違う彼女の顔。

 それに。


「優木さん……、当たってるんだけど……」

「ん~? なにがぁ~?」

「いや、胸が……」

「ああ、当ててるんだよぉ~」

「ぶっ……!」

「はい、ちゅ~……」

「やめれぇぇ~!!」

 彼女の唇が10センチ、5センチ……1センチ……。



 ――姉さん、俺はアンタのせいでキスされます……。



 しかし。


「リア充は死ねぇぇぇ!!」

「あんっ……!」

「……助かった?」


 目を開けると見えるのは天井。さきほどまで俺の視界を覆っていた優木さんの顔はない。

 横を見ると、


「不純異性行為は禁止!」


 OH! クラス委員長――桜井氏ではないか。


「ちょっと邪魔しないでよぉぉ……」

「あなたたちもリア充だったのね!?」

「いや、違うんだ。これには深いわけが……」

「ふんっ、ちょっとこっちに来なさい!」

「あぅあ~」

「ちょっと風待くぅーんー……」


 バタリ。

 突然、声が小さくなったと思えば優木さんはその場で寝息をたてはじめた。


「すぅすぅ……」

「まいっか、って痛い痛い!」

「彼女が気になるのは分かるけどキミはこっちでお説教よ!」

「……」


 そして俺は家庭科室から被服室へと転送された。




「で? この楽しいクリスマスパーティーでなにイチャついてるのよ? ん?」

「だからあれは薬のせいなんだって! って、薬…………あぁ!」

「ど、どうしたの? ……ん?」

「コーラ! 薬! そのまま!」

「……はぁ? ……あれ?」

「まだ全部回収してねーんだ! 早く行かないと!」

「……………………」

「あれ? どうしたんですか桜井さん? 急に黙ちゃって……」


 俯いて沈黙していた彼女は急に俺の胸ぐらを掴んで、


「――え?」

「…………っ」

「……がっ、はっ!」


 後ろに押し倒されました。

 またもや背中を強打する俺を知ってか知らずか、そのまま俺の頭を間に両手をつく桜井さん。

 つまり上から見下ろされる形になる。紅潮した顔はさっきの女と症状が似てる気が……。


「――あたしは!!」

「はい!」

「リア充は爆発すればいいと思ってる!」

「うん知ってます!」

「リア充は敵よ!」

「そうですねっ!」

「――でも!」

「…………でも?」

「……リア充の真似ごとぐらいはしてみたいから……はぁはぁ……」

「(おっとぉ~?)」

「だから……はぁはぁ」

「(これはこれは~?)」

「キス、させて」

「やっばい!!」


 感染確定!

 なんとか逃げようとするが、


「逃げないで!」

「うっ!」


 鳩尾(みぞおち)に拳の鉄槌を振り下ろす桜井さん。


「か……は……っ」


 もろに鳩尾にくらったことで声がでなくなる。

 ここは被服室。だれも来ない。


「(おっと~? これは絶体絶命の大ピンチなんじゃねーかー?)」


 とか言える俺は結構余裕があるんじゃねぇか、と思ったりしているが、実際はそんな余裕ないって事を視聴者さんにお伝えししておきたいんだけど、そんなこと言ってる間に唇が迫ってるっていう絶望的状況にたたされているんだがぁぁぁぁぁって、ちぃおっちっつてと、こ、声が出ない! 息がしづらい! ヤバイヤバイヤバイってぇぇぇぇぇ!!←(テンパってる)


「……んっ」

「(ジィィィィィザス!!)」



 ――姉さん、今度こそ俺はアンタのせいでキスされます……。



 俺も心底諦めたその時。



 ガラガラガラ。


「――――涼くん!! わ、わたしの涼くんに手をだすなメス豚ぁぁ!!」

「きゃっ!」

「(ああ、キリストさまが助けてくれたん、だ……)」


 再度、目を開けると視界を覆っていた女性の顔はない。

 あるのは天井と、姉の怒りと悲しさにまみれたお顔……って、姉?


「涼くん! ああわたしの涼くん! よかった汚されてない……ぐすっ」

「ハ、ハ……。泣、くなよクソ姉……。つーかアンタのせいでこんなことになったん……だろーが……」

「ごめんね涼くん。助けにきたよ……」

「俺のことはいいから早く媚薬入りコーラを回収してくれ……」

「ああ、それなら大丈夫。さっきみんなにそのコーラには毒がはいってるかもしれないって言ってきたから」

「言い過ぎだ言い過ぎ」

「――すぅすぅ」

「なんだ、桜井さんも寝ちゃったよ」

「この媚薬は睡眠作用があるからね」

「ん? なんで?」

「眠らしてる間に服脱がせて、起きたところを狙うの」

「じゃあ睡眠薬でよくないか?」

「いや、この媚薬の睡眠作用が解けた時におこる性欲はものすごいものなのよ」

「……?」

「簡単に説明すると寝ている間に性欲が蓄積されて、起きたら大爆発する感じ」

「いやそれはマズい!!」

「どーして?」

「だって……」


 家庭科室に確か今……。



 ガラガラガラ。



「風待くん! わたしと(ピ――――――――)!」

「ヤベェぇぇ!」

「こんのメス豚が!」

「助けて姉!」

「……助けたら許してくれる!?」



 …………。



「んなわけねェだろテメェのせいでこうなったんだろうが!!」

「ご、ごめんなさ~い」

「でも今は俺の貞操を守って、いやマジで!」

「風待くん、(ピ――――――――)」

「伏字多ッ!! キャラ崩壊してんだが!?」


 ――混沌のクリスマスは終わらない。

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