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Noisy Toy Present!  作者: なろうサンタクロース協会
Noisy Toy Present!
22/30

一夜限りのサンタクロース@ラヴィ

 雪が降り積もり、街中では若者のカップルが歩き回っている。


 ──クリスマスイブ、リア充の祭典。


 こんな若者を恨んでやまない非リア充の話、ではなく、クリスマスイブに仕事が入っている、ある配達員のお話。



 とある会社の一室に、配達員達は集められていた


「えー、ここに集まってもらったのは他でもない、君たち、つまりは24日の7時以降の配達をする人だ」


 その言葉を聞いた配達員達は、なにかヘマをやらかしたか? 休みかな? など、暗くなる者、明るくなる者、反応は様々だった。


「あー、失態があったのではないので安心を。君たちにしてもらいたい事は1つ、今日の配達はこの服を着てもらう」


 部屋にいる配達員全員が静かになった。それもそのはず、先程から話している者の手には赤い服に赤い帽子、つまりはサンタクロースの衣装があったのだ。


「……みんなの反応は分かる、しかしこれは社長の判断なんだ。嫌な者もいるだろうが業務の一環だと思って頼む」


 配達員は戸惑いながらもサンタクロースの衣装を受け取り、各自着替えに行った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……社長は何を考えてんだよ」


 そう呟くのは1人のサンタクロース。


「……はぁ、配達するか」


 そう言うと車に乗り込み、自分の配達する場所を確認する。


「最初は……おっ、近所だな、急いで行くか」


 サンタクロースを乗せた雪車(そり)もとい自動車は、飾りで彩られた街中を進んでいった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ピーンポーン


 ガチャ


「はい、どちら様でしょうか?」

「あ、〇〇宅急便です。えっと……佐藤さんのお宅でしょうか?」

「あ、はい佐藤ですが……」

「こちらの方にサインお願いします」


 そう言ってサインを受け取り、早々に家を後にした。


「……恥ずかしすぎるだろ……つか、相手もいきなりサンタクロースの格好した人が来たら戸惑うっつーの……」


 次の配達先も戸惑われるんだろうなー、と思いながらも車を発進させていった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ピーンポーン


「どちらさまー?」


 軽い声が返って来て、


「宅急便です」


 と、答えると、ガチャっと扉が開いた。


「鈴木さんのお宅でしょうか?」

「あ、はい鈴木です」


 出てきたのはチャラそ……軽い感じの男性だった。


「……えっと、その……宅配の方ですよね?」


 戸惑いながらもそう聞かれたので、恥ずかしさを押しこらえながら、


「はい、あ、ここにサインお願いします」


 そう絞り出すと、相手はサインをした。


「えっと……お仕事頑張って下さい」


 そう言われ、ありがとうございます、と言って早々に車に戻った。


「……周りからみたらそんなに大変そうに見えるのかよ……」


 そう落ち込みながら、次の目的地に向かって行った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……あと1つか……」


 何個かの配達を終え、配達物は残り1つとなった。


「正直、行きたくないなぁ……」


 そう言いながらも仕事なので行かない訳にもいかず、ノロノロと車を発進させる。



「ここか……」


 行きたくない行きたくない、と思いながらもインターホンをならし、出るのを待った。

 留守なら良いのに、留守なら良いのに留守ならいい──


「はい、どちら様で……」


 その瞬間、すべてが固まった──訳にもいかないので、


「あ、どうも、宅急便です」


 そう告げると、


「あ、宅配の方ですか」

「ママー、誰がきたのー?」


 家の中から声が聞こえると、タッタッタっと1人の小学生低学年ぐらいの少年が走ってきた。


「あ! サンタさんだ! ねぇ、おじさんはサンタだよね!」

「おじさんかぁ……」


 そうショックを受けていると、


「こら悠斗、お仕事の邪魔しない」

「あ、大丈夫ですよ、ここで最後なんで。悠斗君、いい子にしていた悠斗君にプレゼントを持ってきたよ」

「わぁ、サンタさんほんと? 悠斗いい子にしてたからプレゼント貰えるの?」


 そう無邪気に聞いてきたので、


「あぁ! 勿論本当さ、だから来年もいい子にしてたらプレゼント持ってくるからね」


 そう言って、


「松元さんですよね? サインお願いします」


 サインを書いてもらい、最後に悠斗君に、


「それじゃまた来年会おうね」


 そう言って、車に戻った。




「……俺なにしてんだろ、配達物の中身がプレゼントじゃなかったらどうしよ……」


 そう考えてると、あ! 変身セットだ! と声がしたので、親御さんがなんとかしてくれたのだろう。


「……ふぅ、疲れたけど、たまには良いな、たまには」


 そう言って、一夜限りのサンタクロースは帰って行ったのであった。

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