プロローグ
息抜きに書いてみました。
全四部の短編となっております。
宜しければ皆さんも生き抜き程度に読んでやってください。
それでは、どうぞ。
それはもう、遠い昔。
彼が、初めて死んだとき。
それは呪いだったのだろうか。
世界のあらゆる声が聞こえた気がした。
勇者たる彼が最後の決戦で朽ち果て、遺して逝ってしまった人々の声だ。
「どうして魔王を殺せなかった」
「残された私たちは、魔王に支配され続けろと言うのか」
「お前が死んでしまっては、この世界は終わりだ」
当時の彼は罪悪感に溺れた。
押し寄せてくるのは恨みばかり。
今となってしまえば既に死と同じく、慣れ親しんだものだ。
死から初めての目覚めは、知らない天井から始まった。
死後の世界だと思った彼は、悔やんだ。
悔やんでも悔やみきれない失敗が、涙に変わって零れ落ちた。
忌憚なく結論から言ってしまうと、そこは彼の想像した死後の世界ではなかった。
天国や地獄、そんな生温いものではない。
転生。
新たな肉体を持って、新たな環境を持つ。
唯一、同じ記憶、同じ精神を共有した。
それは理不尽に繰り返され、そして絶望を与える。
新たな世界でも、あらゆる世界でも、彼は勇者だった。
生まれ変わる彼の――終わらない人生は続く。