表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

戦国前夜3

巌が去って、落ち着きを取り戻した歴史愛好会の面々は、お互いの紙コップにビールやワインを注ぎ合いながら、今後の活動について語り合った。

「枡型山なんかどうだ、田中」

「直ぐ近くじゃないですか大将。どうせなら、もう少し遠出しましょうよ」

「小机城なんか、いいんじゃないですか」

「おっ、よく知ってるね。さすが歴史博士の綾部くん」

「いやーそうでもないですよ橘さん。あっ、そう言えば小机城って、北条にとってはかなり重要な城だったんですよね、先生」

「そうですね。特に多摩川を挟んで、扇ヶ谷上杉氏と対峙していた頃は重要でしたね。もちろんその時代には、ここの近くにある枡型城や小沢城も、国境の城として重要な位置を占めていたと思いますよ」

「なるほどねぇ」

 今の彼らの会話でもわかるとおり、このマンションのある登戸周辺には、後北条氏ゆかりの山城が多数点在していた。しかも、それらの多くは、地元の人々の尽力により整備保存されており、気軽に散策を楽しめるようになっていた。ちなみに、枡型山城跡はこのマンションの南東1キロ、小沢天神山城跡は西方3キロ、小机城跡は南東12キロにある。

「あっ、ちょっとすみません」

 下里が、携帯電話が鳴ったので、その場を離れ窓際に移動した。その時、盛り上がっていた会話が一瞬途切れた。だいぶ酔っていた綾部は、この後の勤務のことを考えて、今できた会話の隙間を利用して

「あっ、すいません、日報を書かないといけないんで、失礼します」

 と言って、その場を離れた。

 管理室に戻った綾部は、宣言どうり日報を書くため机に座った。しかし、それは睡魔との闘いの始まりであった。

 酔って集中力も思考力も低下しているうえに、座ってじっと下を向く姿勢を取ったため、次第に意識が途切れ途切れになってきた。彼は必至で、頬を叩いたり足を抓ったりして、抵抗を試みたがあまり効果がなかった。

 さらに、暖房のきいた部屋とロビーから聞こえてくる適度な雑音が呂翁の枕となり、彼を、邯鄲の夢へと誘っていった。机の右隅に置いてある時計は、7時50分を指していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ