今日の晩ゴハン
次の展開に行く前に…
ちょっとした小話です。
* * * * * * * *
あのあと、私たち三人は
他の皆が集まる場所に戻ったのだが、一体何十分かかるんだ!?と騒がれてしまった。
私はできる限りの説明を試みたけれど、守屋くんに敵うわけもなく、結局その場を落ち着かせたのは9割がた彼のおかげであった。
今はと言うと、先程守屋くんと別れて
お助け屋さんと二人で家路を歩いているところだ。時刻はPM7:00を過ぎた。
夏が始まったばかりなので、既に辺りは真っ暗。
7:00でも薄明るくなるまでにはどれくらいかかるだろうか。ぼんやりと鈴虫か何かが鳴く声に耳を傾けていると、なんだか話をしたくなった。
傍らで下駄をカラコロ鳴らすひょろ長い男に言葉をかける。
「――彼、守屋くんが霊が見えること、
最初から知ってたんでしょう、お助け屋さん。」
濃密な黒闇が気持ち悪い。体に纏わり付いてくるみたいで。
その空気を蹴り飛ばすかのように、
カッコ、カッコと軽快な音を響かせている男。
ちろっと私を見ただけで、視線を下に落とす。
「まーねぇー。
だってさぁ、もろにこっち見てたもん。
目ぇ合ったからね。」
かったるそうに言って、足元の小石を蹴る。
小石はコンクリートの地面を3回ほど跳ね、壁に当たって止まった。
思い返せば
確かに守屋くんの視線が少し変だったと思う。
朝、あいさつをした時だって、時折私じゃない方へと視線を泳がせていたし。
「今日、ついてきた霊が多かったのは守屋くんも関係しているんですか?」
「うーん。
直接ってわけじゃないけどー……。
なんてゆーか、あの人、
ある意味目立つんだよねぇ。小羽ちゃんとは"違う"。"いる"って分かる存在感。」
長い両腕を思い切り伸ばす。空に向かって伸びをする姿は、まるで猫のようにも見える。欠伸を噛み殺しながら「血筋のせいかなぁ」と呟く。
「住職の血縁者。
物心ついた時からの力。
自然と放たれる"存在感"。ヤツラは感じ取るだろうね。
"近づかない方がいい"。」
「しか――しっ。」おどけた感じで、ビシリ、っ私に人差し指を突き付ける。
「そんな危険な存在の隣に、美味そうな匂い。
くえば力増幅できるという獲物がいます。
さァ、ヤツらは何を思うでしょう?」
さっきまで夜の濃密さに隠れていた月が顔を出し、静かに下界を照らす。
お助け屋さんの右目が獣のそれと同じようにぎらついた。
「彼等はきっと思うでしょう。
"ああ、美味そうだ。
喰いたい、喰いたい…!"」
風が叫び声を上げた。
私の心を掻き乱そうというのか。
「多少危険かもしれなくても、"美味そうな獲物"の方を取るでしょーね。
強くなりたいんですから。」
そんなものだろうか。
私だったら、より安全な道を行くけれど。
「……それはやっぱり、私が守屋くんを巻き込んでしまったわけですよね。」
私が感想を述べると、何故か不思議そうな顔をされた。 「そ―でもないと思うけどね。ヤツらにとっちゃあ、お前さんより モーリーくんの"存在感"のが幾分強いし。
モーリーくんに気づいて、そばにいた小羽ちゃんに目を向けたのもいたみたい。」
そんなものなのか。
納得したようなしないような…。
私が黙り込んでいると、お助け屋さんは話の脈絡関係なしに口を開いた。
「ところで、今日の晩ご飯は何です?」
「――は…?」
はたして、今まで何を喋っていたのか一瞬分からなくなりそうだったが、確実に晩ご飯に関する話題なんかどはなかった。
本人はまったく気にしてないようだから、言わないけれど。
「暑くなってきたし、冷し中華とか―、そうめんとか―…、やっぱし冷し中華がいいなぁ。」
「食べられないのではなかったですか?」
すると一瞬の間をおいて、ケロリと答えてみせる。
あまりに屈託なく言うものだから、こっちが面食らってしまう。 「食べられないですよ?
そら、食べんのは小羽ちゃんに決まってるじゃあないですか。
私は見てるのが楽しいんだよ。」
他人の食事風景を見ることのどこら辺が楽しいねか、皆目理解できないが。
「―そういうものですか。」
とりあえず、曖昧な返事を返しておく。
彼には必要ないかもしれない言葉を。
結局この日の晩ご飯は野菜炒めと白米であった。
叔母から送られてきた野菜が大量に残っていたからである。人参に至っては死亡寸前だった。
お助け屋敷さんは不満そうだったが、それでも、
私が黙々と食べ始まると、楽しそうな視線を送ってきた。
ただの野菜炒めなのに、なかなか飲み込めなくて困った。
ふと、お助け屋さんがものを食べることができれば、この大量に残っている野菜も食べ切れるかな、と思ったりもした。
思っただけだけど。
次、登場人物増えます。
少しです。




