公園にて
次の展開の繋ぎみたいなものです。
だから短めです。
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午後8時3分。
さすがに夏と言えど、辺りは真っ暗だ。
いつもはもっと早く通るこの帰路を、疲れきった両足を引きずりながら歩み進める。
「大変でしたねぇ」
そののんびりした声も、今聞くとなんだか落ち着く。怒声、大声はやっぱり好きにはなれない。
「はい…まさか酔っ払いが来るなんて思いませんでした。店長も、こんなことは初めてだと」
本来ならば午後7時で閉店のところ。
その男性は、営業時間を過ぎてから店のカウベルを鳴らした。
ちょうど後片付けをしていた時で、店長も私も同時に目を丸くした。
顔を真っ赤にして、平衡感覚を失った足取りは非常に危なっかしく、倒れ込むようにして店に入ってきたのだ。
おそらく50代から60代くらい。小太りで、身長もそんなにない。店長と二人で近寄って「大丈夫ですか」と声をかけると、酒臭い息をむっと吐き出して、何やら訳のわからないことを叫び出す。
かなり泥酔していた。
店長がお帰り願うように言っても全く通じず、とりあえず水を飲ませようとコップを持ってきても、何が気に入らないのか手で突っぱねる。
とにかく暴れ放題であった。30ほどその状態が続いて、男は力尽きたように動かなくなった。
しょうがないので持っていた鞄から身元を調べさせてもらい、男性の自宅へ電話をした。
不幸中の幸いとでも言うのだろうか。
4コール目で、気の良さそうな女性が出た。
そのあとは早かった。
家が近いらしく、すぐに迎えに来た。
何度も忙しく頭を下げ、謝罪の言葉を述べるのを、店長は困った笑顔で「大丈夫ですから。気にしませんよ」と宥めた後、男性は女性に引きずられるようにして店から出て行った。
全てが終わった時には、
こんな時間になってしまった。
「仲の良さそ―なご夫婦でしたね。奥様はかなり苦労なされてますが」
くっくっ、と愉快そうに笑う。
黒い着物は、ほぼ完全にこの暗闇へ溶け込んでおり、時折電灯に照らされると、彼の色白な肌が際立った。本物の幽霊に見える。何を今更、とは思うが、一瞬だけ"コワイ"と感じてしまった。
そして多分、お助け屋さんはそれを感じ取っただろう。つぅ、と目を細めた。
謝るのもなんだかおかしい気がして、そのことには触れないようにした。
「…もう、酔っ払いには御免です。このようなことが今後起こらないよう、奥さんにはこれからも頑張っていただきたいです」
「ははは、小羽ちゃん、だーいぶお疲れですねぇ。
どれ、あの日みたいに負ぶさります?」
ヘラヘラ笑いながら、自らの背中を指差す。
からかい口調であっても、この人は本当にやりかねない。
「いえ、結構で―――」
広い道に出て、小さな公園に差し掛かったところだった。私の声はある人物によって遮られた。
この暗闇の中でもよく通る、ドスの利いた女声。
「一人でなに喋ってんの?キモチワルイ」
私は後悔した。
また油断して、お助け屋さんと普通に会話してしまったことを。
そして、
暗闇であっても理解した。
このドスの利いた声が、
望月璃子のものであるということを。
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次はとても大切な話です。投稿まで、大分時間がかかると思います(>_<)
その分頑張って書きますので、よろしくお願いします。




