HELP―守屋side
タイトル通り、守屋目線で書いたものです。
すっごい短いです。
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「―――あれっ…」
5時間目が始まる5分前。
ついさっき、校庭から戻ってきたところだった。
すると彼女の姿が見当たらないということに、すぐ気づいた。
隣の席のその娘は、いつも授業開始5分前には必ず着席している、とても真面目な人だから。
この時間になってもいないというのは変だった。
「なあ、斎藤!峰岸さん知らね?」
たまたま近くにいたメガネに声をかける。斎藤は昼休み、教室にいただろうと思ったからでもあるけど。
加えて言うと、こいつはよく周りが見えているから。
「へ?女王?女王なら、廊下ですれ違ったけど」
読んでいた文庫本を開いたまま、平然と答える。
斎藤は何故か、峰岸さんのことを女王と呼ぶ。理由を聞いたら"雰囲気がそれっぽい"と言われたっけ。
そんなことないと思うけど。
「どこ行ったとか、わかんない?」
「さぁ…なんか一人でぶつぶつ言ってて怖かったぞ。てか変だった。やっぱありゃ、何か見えてんな」
一人で……?
ザワザワと胸がざわつく。
やばい気がする。
授業開始まで、あと2分もない。けれど峰岸さんは来ない。
絶対変だ。
何かあったんだ。
その時、
「―――小羽ちゃんが、危ないです」
耳元で男の声が聞こえた。ぞっとして振り返ると、黒い着物に身を包んだ男。
銀色の目を光らせて立っていた。―いつの間に!
ヘラヘラしている印象しかなく、いつも峰岸さんのそばにいたこの男。
でも、今は無表情で、とても冷ややかだった。
口元を優雅に袖で隠し、目を細める。
「モーリーくん。ちょいと手ぇ貸してくれませんか。私一人じゃあ、どーやら大変そうなんすよ。
なんせ小羽ちゃんの居場所がわかりませんで」
ゆっくりと静かに、着物男が言葉を紡ぐ。
答えは決まっていた。
俺よりもかなり上の方にある顔を見上げた。
「わかった。探す」
「――そりゃあ、よかった」
ぽつりと言って、唇をにぃ、と吊り上げる。…笑ってんのか?不気味な人だな。
男はそれだけ言うと、いつの間にか姿を消した。
「?どした、モーリー。誰に言ってんだ…って、おい?!」
「わりぃ斎藤!気分悪くなったから保健室行くって、先生に言っといて!」
勢いよく教室を飛び出す。
背後で何かを言う斎藤と、授業開始の鐘の音。
どんどん遠のいていく。
あーあ、俺、一応今までの授業はちゃんと出てたんだけどな、と苦笑しながら廊下を駆け抜ける。
当然のことだけど、廊下には誰もいない。
どこまでも続きそうな白い廊下を、全速力で走っていた。
今となっては遅いけど、4時間目が終わった時、彼女は少し様子が変ではなかったか?
何か言いたそうにしていなかったか?
もしそうだったのなら、気づいてあげられなかった自分が憎い。
わかっていたではないか。
彼女が自分から"助けて"なんて言わないことくらい。
ちくしょう。
お願いだから無事でいてくれと。ただそれだけを思って、走っていた。
次は、ちょっとかかるかもです。待っていただけるとうれしいです…(^^)




