同じクラスの黒田くん。
謎の少年、黒田くんの登場です。
5時間目まであと20分ほど。
一緒に食べようと言った守屋くんは、随分前に他の友人たちに連れていかれた。
田中くん…だっただろうか。
右手にサッカーボールを持っていたので、おそらくグランドでサッカーでもやるのだろう。
誰とでも話す守屋くんは、やはり、周りが放っておくはずがなく、時々私ばかり構ってもらってとても申し訳ない気持ちになる。
守屋くんも、私は放っておけばいいのに、とは思うが、"大切な友達"となった今、そういうわけにはいかないのだろう。
一通り考えがそこに落ち着き、時間も時間なのでお手洗いに行こうと席を立った。
「ねぇ、君、峰岸小羽さんだよね?」
お手洗いから教室へ戻る際、突然背後から声をかけられた。
守屋くんでも、お助け屋さんでもない男の声に、はて?と首を傾げた。二人の他に私に話しかける者が、この学校にいただろうか。
とりあえず、フルネームで呼ばれた以上振り向かざるを得ないので、相手の方を見る。
「はい。そうですが………どちら様ですか」
顔くらいは知っているだろうと思っていたけれど、そこにいたのは全く知らない男子生徒だった。
今時にしては珍しく、黒髪を短く刈り上げていて好青年風である。ただ、お助け屋さんのように色白なわけでもないのに顔色が悪く見えるのは何故だろう。
「ひどいなぁ。黒田だよ。同じクラスの」
そう言って胸元のクラス章を見せる。たしかに私と同じクラスの数字が刻まれている。
しかし…
どうしたことだろう。
本当にわからない。
この場合、多分、非があるとしたら私の方だ。
なぜなら私は元々人の名前と顔を覚えるのが苦手だから。
クラスメイトの顔と名前くらい、大体覚えたものと鷹を括っていたが、そうではなかったのかもしれない。しかも、この黒田という男子生徒は私をフルネームで呼んだ。結果、知ったかぶりは良くないと思いつつ、限りなくそれに近い返答をした。
「ああ……ごめん、黒田くん。何か用?」
すると顔ににっこりと笑顔を張り付け、親しげに
「うん。ちょっと話したいことがあるんだ。でもここだと話しづらいから、屋上行こうよ」言うなり、私の腕を掴み、半ば連行される形で屋上へ向かう。
教室じゃだめなの、と聞いたけれど、聞き入れてはくれず。
「だめ!屋上がいいんだ」
と、強めの口調で言われてしまったのだからいた仕方ない。
黙って引っ張られることにした。そんな中、黒田くんの"話したいこと"よりも、私は今胸の中を渦巻く違和感の方が気になってしょうがなかった。
その違和感は、気のせいでなければ黒田くんが私の腕を掴んでから益々酷くなっているようだった。
ドロドロと肺に溜まる異物。
一歩進むごとに違和感は広がる。……なんだ、これは。
一方、黒田くんは私の腕をぐいぐい引っ張って進んでゆく。
心なしか少し急いでいるようだ。まぁ、昼休みもあと15分ちょっとしかないのだから、当然であるが。
「――――――――あ、」
小さく声を漏らす。
幸い黒田くんには聞こえなかったみたいだ。ほっと胸を撫で下ろす。だって、偶然開いていた窓から守屋くんが見えたから、だなんて言えるわけない。
守屋くんは、校庭で複数の友人たちとサッカーをしていた。
その顔がとても楽しそうで。
なんだか心が和んで優しい気持ちになれた。
しかし、暫く歩いていると窓は無くなり、視界から守屋くんはいなくなったのだった。
短めの章が続きます。
次までは。
次の次は長い予定、です。




