残響
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「どーも!いやぁ、またお会いしましたねぇ!」
「…………………」
とある高校の中庭に、派手な黒い着物の男がいた。
線の異常に細い身体に、頭には大きな、くすんだ帽子を目深く被っている。帽子に比例して、長くボサボサの髪もくすんだ茶色。
それが麻の紐で一本に束ねられていた。
口元に妖しげな微笑みを浮かべ、目の前にいる二つのモノに陽気に話しかけている。
時折、帽子と髪の隙間から、キラリと銀色の瞳が光った。
「なーるほど、声は出ませんか。そりゃそうですよねぇ。
あの時貴方方は、何の後悔もなかったんですから」
「……………………」答えぬ相手に、しかし男は喋り続ける。
ふざけた口調に陽気な声。
一つだけ、目だけは妙な真剣さを秘めており、何の意味のない話をしているのではないと強く訴えているようだった。
「まさか、こんなことになるだなんて、思わなかったのでしょう?いやいや責めてるんじゃあありませんよ。私はね、むしろ貴方方のなさったことに拍手を送りたいくらいなんです」そう言って、棒切れのような手を広げて、わざとらしく拍手の真似をする。相変わらず、相手は一言も声を発さない。
男の足元には、いつの間にか真っ黒な黒猫が擦り寄っており、相手にしてくれと言わんばかりにニャーニャーと気怠げに鳴きはじめる。男はちら、と目を向けただけで再び口を開いた。
「どうか、責めないでくださいな。だぁれも悪くないんですから。ただね、一個だけわかってください。感情に素直になれる人がいれば、そうでない人もいるんです」
吐息のように、熱を持った風が吹く。夏の太陽が照らし続けているにもかかわらず、その男の頬は異常なほど冷え切っていて、どんな熱も意味を成さない。
愛も情も遥か昔に奪われた。
そんな冷やかな瞳が、ただただ、きらりと妖しく光るのであった。
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前の章とは場面が変わる上に、ちょっと意味ありげですね。
大事なところでもあります。




