オモウ、ココロ―小薗井結菜side
店長目線で書きました。
小羽ってほんと、周りから愛される子です…
いまいち小羽の魅力がわからないと思う方、いると思いますが(私も時々わからなくなりますが…)、そこはこれから徐々に書いて行こうと思ってます。
よろしくお願いします。
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「ねーユイちゃん!
ここで"峰岸さん"って子働いてる?」
6月の、頭の方だっただろうか。
来客の女子高生に話し掛けられた。
その子だけじゃなく、周りには友達三人がいた。
「峰岸小羽ちゃんのことかな。うん、月・木は来てくれてるよっ?」
「あー、やっぱり本当だったんだー!すっごい意外!だってあの峰岸さんだよ!?」
「ねー!!」と言い合う女の子達が話しているのは、最近ここで働き始めた黒髪の女の子のことだった。
私は、勘の鈍い方だったけれど、彼女達がその子をあまり良く思っていないんだなということは、口ぶりで何となくわかった。
「彼女のこと知ってるの―?お友達っ?」
空気を悪くしないよう、やんわりと聞く。
「んー……、知ってるよー。けど、友達じゃないかな。」
「多分、うちらの学年の子らはほとんど知ってると思うよ?真面目で成績トップで、美人だしねー!」
「でもさ、霊感あるとか噂なかった?」 「あー、あったあった!!
なんか暗いもんねー。
話し掛けづらいし。」
…………なんてゆーか、
"悪目立ち"な子なのかな?
雰囲気のある子ではあった。彼女のことを大して知っているわけではないけれど、たしかにどこか陰のある感じはした。
まだ一度も、私の前で笑ったことがないから。
「へぇー、そうなの。
あ、でもお友達はいるんでしょう?」 「えー、どうだろ?いないんじゃないかなぁ。教室でもずっと一人だし。」
「……え!?一人も?一人もいないの?」
びっくりして聞き返すが、どうやら本当らしい。
思った以上に閉鎖的な面を持っているのだとわかった。
でも、一人だけよく話しかける男子がいるようで、少しほっとした。
「だからさ、ここでバイトしてるって聞いてびっくりだよね!うち、バイト禁止されてるのに。」
「あ、それだけど、峰岸さん一人暮らししてるんじゃん?だからOKらしいよ。校長からも許可出てるって。」
「あー両親と折り合い悪いんだっけか?」
「え?両親が離婚して、ショックで一人暮らししてるんじゃなかった?」 「えーそーなのー?」
すごい子だな…峰岸小羽ちゃんて。
次から次へと出てくる噂の数々。ほとんどは、根も葉も無い噂なんだろうけど…
「一人暮らし…」
彼女たちの話しを聞いて、峰岸小羽が一人暮らし、というのは本当である気がした。
私に対しての彼女の振る舞いぶりはまさに真面目そのものだったし、そんな真面目な子が、私欲のためだけに校則違反に手を出すとは思えなかった。
だけど、自分の生活費のためであるのなら、それはすごく納得のいく話だった。たとえ日が浅くても、働いている彼女を見ていればわかる。必要以上ってくらい責任感が強く、自分のことはきっちりやる、彼女を見ていれば。 「あの子は………峰岸ちゃんは、とっても、とってもいい子だわ。」
あのとき、にっこりと彼女たちに笑いかけた私は、まだ峰岸小羽という子のことをそんなに好いてるわけじゃなかった。
過去の一件があったからだけじゃなく、彼女があまりにもコミュニケーション能力に乏しかったから。
今でも本心から笑わないのは変わらない。けれど私は知っている。
他人に迷惑をかけまいとして、自分一人で全てを抱え込んでしまう、人一倍強くて、感情に不器用で、一見一人でも大丈夫そうに見える、あの子。
悪気はないんだろうけど、彼女の無意識には時々ざっくりと切られる思いがする。一方で、彼女の無意識に助けられることもある。
多分、私が峰岸小羽を手元に置いているのは"その一方で"があるからだ。
策略や計算のない、手放しの状態で、何気なく人を助けてしまうなんて、私にできるだろうか。
きっと、できない。
私の優しさなんて、嘘っぱちだもの。
やんわり笑って、ごまかしているだけだもの。
"店長"
うっすらと瞼を開ける。
最初にみえたのは天井の木目だった。
次に、遠慮がちに視界に入る、黒髪の女の子。
あ、そっか。
私、寝ちゃってたんだ。
と、ぼんやり思う。
それにしても、峰岸ちゃんて美人さんだなぁ。
色白いし、目おっきいし、鼻高くて大人っぽいし。
童顔の私には羨ましすぎる。でもきっと、本人は自覚ないんだろう。
自分の美貌を鼻にかけるほど、安っぽい子じゃないもんね、峰岸ちゃん。
「今日は一日お疲れ様っ、風邪も良くなったみたいだし、ほんと助かっちゃった。」
今日も、明日も、明後日も。
私はこの子に笑いかけよう。
いつか、ちゃんと
心から笑ってくれるように。
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店長は、何にも考えてなさそうな感じで、多分一番考えてる人…です。
小羽に対しては、まるで娘のような感覚を持っています。




