さんばか!part2
昼休み。私と明音ちゃんと結衣ちゃんは机をくっつけてお昼ご飯を食べていた。
「結衣ちゃん、それなぁに?」
結衣ちゃんは片手に問題集を持ち、ページに目を落としたまま、
器用におかずをつまんでいた。
本当に集中しているのだろう、私の声にも気づく気配がない。
「ぷくく……チャーンス」
明音ちゃんは箸を置き、小悪魔のような笑みを浮かべて、
結衣ちゃんの耳元にそっと顔を寄せ、ふっと息を吹きかける。
「ヒャッ!何すんだバカ野郎!」
「お客さーん、ながら勉強はやめてくださーい」
「うっせーな、良いだろ」
鋭く睨まれた明音ちゃんは、「ウワッ!ヤンキーだ」と私に飛びついてくる。
「奥さん観ましたか?この偏差値の高い高校にヤンキーが居ましてよ?」
「あはは~、お勉強の邪魔をしちゃだめだよぉ」
この偏差値の高い高校に、明音ちゃんが居る方が不思議だけれど……
「でも何のお勉強してるの?」
「んー?国語」
「結衣ちゃんの狙ってる大学は国語が特別に難しいんだっけ?」
「そーだよ」
すると、お弁当を食べていた明音ちゃんの箸が再び止まる。
「もごもごもご!」
「口の物なくしてから話せよ……」
「――ッんぐ、あのさ!国語のテストで『作者の気持ちを答えよ』ってあったじゃん、二人共あれ答えられた?」
結衣ちゃんは首を横に振り私の方を見た。
「私は何とかね、でも何度も読み直しちゃった。難しいよね~」
「そういうアンタはどうなんだよ」
「あんなの余裕よ、まったく、童を誰だと思っておる?巫女ぞ?」
指をたてながら「人の心を読むのなんか造作もないわ」と自慢げに言う。
「ならアタシらが今何を考えてるか当ててみろ」
「んなお姉さん、そんな子供みたいなことを……余裕っすわ」
ビシッと私の方を指さして、
「ズバリッ!穂乃花は私の弁当の唐揚げを美味しそうだと思ってる!」と、ドヤ顔で言う。
「うん、美味しそうだねぇ」
「いや、さっきっから穂乃花はアンタの唐揚げを見てただろ!顔を見りゃ誰だってわかるよ」
「なら結衣!チミは、私とおかずを交換したいと思っている!」
「違う。お前が、しゃべってばっかりで全然食べてないなって思ってるんだ」
「ぐぬぬ~、MPが足りないか……」
「ダメじゃねーか、てか巫女じゃなくて魔法使いかよ」
「国語の時は、文章の中に手がかりがあったよね~」
「おいおい、穂乃花に遠回しに人の会話をよく聞けって言われてんぞ奥さん」
「ちっ、ちがうよぉ」
結衣ちゃんに鼻で笑われた明音ちゃんは、
「許すまじ!悪霊退散!」と、なぜか私に携帯のライトを向けてきた。
「眩しい!私じゃないよぉ!」
「悔しいからってみじめだぞ~」
「ま、まあ?私だって物語なら分かるし!」
食べ終わった結衣ちゃんは、お弁当箱を片付け始めた。
「なら、私達が小説の登場人物だったら?
作者は今、何を考えてると思う?」
「明音ちゃん、お昼休み中にお弁当食べ終わるかな~って、心配してるかも」
「それは私が考えてる」
「まさか……結衣が作者⁉」
「だったら、お前のセリフ半分にしてるわ」
「まったく、私の魅力が分からない困った作者さんだじぇ」
明音ちゃんが唐揚げに箸を伸ばすと、結衣ちゃんが私にウインクした。
「見てな。あれ食ったら、うまいって言うぞ」
「ウマッ!」
私は思わずクスリと笑った。
結衣ちゃんは明音ちゃんの事なら何でも分かるのでした……




