表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

新選組と生きた男の叙事伝説

時は幕末、動乱の時代。伊吹蒼真は、名門武士の家に生を受けた。剣の才に恵まれ、将来を嘱望される身であったが、蒼真は武士としての生き方に疑問を抱いていた。

蒼真は三上藩であり、一万石であったが近い藩の彦根藩とは大老井伊直弼事件でひと悶着合って藩といえばわかりやすいのかと?


「武士道とは、死ぬことと見つけたり」


幼い頃から教え込まれた武士道の精神は、蒼真にとって虚飾に過ぎなかった。民は貧困にあえぎ、世は乱れている。主君のために命を捨てることに、意味を見出せなかった。しかし、それでも蒼真の心には、武士として生きてきた誇りが確かに存在していた。


ある日、蒼真は藩の不正を暴こうとした友を失う。無実の罪を着せられ、切腹させられた友の死をきっかけに、蒼真は自分の信じる正義のために生きることを決意し、藩を脱藩する。


剣を手に諸国を旅する蒼真は、道中、様々な人々との出会いと別れを経験する。貧しい村人を助け、 悪事を働く悪徳商人や役人を斬る。


そんな旅の途中、蒼真は京で、坂本龍馬と出会う。龍馬は、身分に関係なく誰もが平等に生きられる新しい日本を 夢見ていた。


「武士も、町民も、農民も、皆同じ人間じゃき。皆が手を取り合って、新しい国を創るがじゃ!」


龍馬の言葉は、蒼真の心に深く響いた。しかし、蒼真は武士としての誇りも捨てきれずにいた。武士道は間違っているのか? それとも、自分の解釈が間違っているのか? 蒼真は自問自答を繰り返す。


そんな折、蒼真は革命思想を持つ神秘的な女性、小夜と出会う。小夜との出会いを通して、蒼真は初めて自分の進むべき道を見つける。


「世の中を変えるには、武力だけでは駄目だ。人々の心を変えなければ」


蒼真は小夜と共に、新しい時代を築くために立ち上がる。しかし、二人の前には、旧勢力の 幕府との壁 が立ちはだかる。そして、蒼真は自分が幕府から追われる身であることを告げる。小夜のそばにいることは、彼女を危険に晒すことになる。


「小夜、俺はお前を巻き込むわけにはいかない。俺は幕府に追われる身だ。いつ命を落とすかわからない。お前のそばにいることは、お前を危険に晒すことになるんだ」


蒼真はそう言って、小夜を突き放そうとするが、小夜は蒼真の言葉を受け入れようとしない。


「蒼真様、私はあなたのそばにいたいのです。危険だとしても、あなたの力になりたい。運命を共にしたいのです」


互いを想いながらも、時代の波に翻弄される二人。そんな中、蒼真は会津藩が新政府軍との戦に備え、兵力を増強しているという情報を耳にする。武士として死ぬことこそが、自分の辿るべき道なのではないか。そう考えた蒼真は小夜に別れを告げず、姿を消す。


会津へ向かう旅の途中、蒼真はかつての同志、数合孫八(すごうまごはち)が新選組に入り、会津で活躍しているという噂を耳にする。孫八に会うため、蒼真は会津藩へと向かい、再会を果たす。しかし、孫八は蒼真に冷たい視線を向ける。


「蒼真、お前は一体何をしに来たんだ?お前は脱藩者だ。会津に何の義理がある?」


蒼真は、自分が会津に来た理由、そして、武士として死ぬ覚悟を孫八に伝える。


「俺は……武士として、死にたいんだ。武士道が 何なのか、最後まで見届けたい。会津で、武士道を貫き通したい」


孫八はしばらく沈黙した後、蒼真に新選組の一員として戦うことを命じる。蒼真は、剣を手に、会津のために戦うことを誓う。


会津戦争は激化し、新政府軍の圧倒的な兵力と近代兵器の前に、会津藩は次第に追い詰められていく。ある日、激しい戦闘中、蒼真は敵の銃弾を受け、左腕を負傷してしまう。


瀕死の蒼真を助けたのは、孫八だった。孫八は蒼真に叫ぶ。


「蒼真!まだ死ぬな!武士が滅びるまで、それがお前の仕事だ!お前は武士道を最後まで見届けなければならない!生きて後世に伝えろ!」


その後、新選組は土方歳三の指揮のもと、蝦夷地へと落ち延びる。蝦夷地でも、新政府軍との戦いは続く。土方は蒼真に語りかける。


「蒼真、お前の考え方が正しいのか、俺にはわからない。武士道が正しいのか、間違っているのか、俺にはわからない。だが、孫八が託したようにお前は残れ。お前は、武士の時代の終わりを 見届ける義務がある」


土方の言葉を受け、蒼真は官軍に降伏し、生き延びることを選んだ。それは、武士として生きてきた自分への、最後の意地だった。


蝦夷地は陥落し、蒼真は青森の商家に奉公に出される。そこで、蒼真は蝦夷地陥落の報を聞き、絶望する。


一方、蒼真が蝦夷地に渡ったという知らせを受けた小夜は、蒼真の行方を捜すため、青森に住む親戚の家で奉公することになった。蝦夷地陥落の報は、小夜の希望を打ち砕くものだった。


そんな中、小夜のもとに、官軍側の捕虜として、蒼真が捕らえられたという知らせが届く。小夜は海へと向かい、官軍側の捕虜収容所で、蒼真の姿を見つける。


ボロボロになった蒼真の姿を見て、小夜は言葉を失う。


「蒼真様、生きていてくれて、よかった……」


再会を喜ぶ間もなく、蒼真は小夜に、土方歳三から託された手紙を差し出す。


「小夜殿、無事で良かった。実は、土方さんからあなたへの手紙を預かっている。私は捕らわれの身であり、いつ謁見されるかわからない。だから、この手紙を預かって欲しい」


そして、蒼真は小夜に、自分が死んだ後も、自分の生きた証が残ることを願う。


「世の中が平和になったら……世の中に、この時代の人が、何を思いながら散っていったのか伝えてください。武士道とは何だったのか、会津戦争は何だったのか、新選組は何だったのか……全てを、ありのままに伝えて欲しい。武士道を信じて生きた男が、最後に何を思ったのか……伝えて欲しい」


「間もなく、私は島流しか、処刑されるだろう。もう二度と会うことはないかもしれない。だから……どうか、お願いします」


小夜は、蒼真の切実な思いを受け止め、力強く頷く。


別れの時が来た。蒼真は護送され、小夜はその姿を涙で見送る。


時代は移り変わり、明治という新しい時代が訪れた。かつての戦乱は遠い昔の出来事となり、人々は新しい生活を始めた。


小夜は、蒼真から託された土方歳三の手紙を何度も読み返し、会津戦争や新選組に関する資料を集め、龍馬との出会いを思い出しながら、少しずつ物語を書き始める。


それは、会津戦争で散った武士たちの悲哀、新選組の志、龍馬の夢、そして、時代の波に翻弄されながらも懸命に生きた人々の姿を描いた物語だった。


小夜が伝えたかったのは、「人は、何かに縋りながら生きる」ということだった。武士道、革命、新しい時代……人は、様々な価値観の中で葛藤し、苦しみながらも、自分の信じる何かを信じて生きていく。小夜は、物語を通して、その姿を描き出した。


長い年月をかけ、小夜はついに物語を完成させる。


「新選組と生きた男の叙事伝説 - 散華の譜 -」


物語は、匿名で出版された。しかし、その内容は瞬く間に人々の心を捉え、口コミで広まっていく。


物語に登場する人物は、実在の人物をモデルにしており、会津戦争や新選組の戦いも史実に基づいて描かれている。しかし、物語の魅力は、それだけではなかった。


小夜は、物語を通して、武士道とは何か、正義とは何か、そして、人間とは何かを問いかけていた。読者は、物語に登場する人物たちの生き方に共感し、涙を流し、自らの生き方を見つめ直す。


物語は、世代を超えて読み継がれ、やがて、「新選組と生きた男の叙事伝説」として、人々の記憶に深く刻まれることになった。


物語の最後に、小夜はこう書き記している。


「この物語は、私が愛した人、伊吹蒼真の物語である。彼は、武士として生きることに悩み、革命を志し、最後は武士として、そして人として生きていった。彼は、時代の矛盾を一身に背負い、苦しみながらも、自分の信じる何かを信じ続けた。そして、その全てを私に託した。私は、彼の遺志を継ぎ、この物語を後世に語り継ぐ。この物語が、いつか、誰かの心の光となることを願って……」



そして、物語の最後の一節に、小夜は自問自答する。


「よく、武道と武士道の違いは何だと問われる。武道は直接、人を殺めることはないかもしれない。しかし、武道も武士道も、己を律し、自分自身との問いに向き合うという点においては、同じなのではないか。武士道は、死を覚悟することで、生を極める道だとするならば、武道もまた、鍛錬を通して、自己を高め、より良く生きるための道なのではないか。蒼真様は、武士道に苦しみ、その矛盾に悩みながらも、武士として生きた。私もまた、蒼真様の生き方を通して、武士道とは何かを考え続けている。その答えは、まだ見つからない。しかし、私はこれからも、武士道とは何か、人間とは何かを問い続けながら、生きていくだろう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ