第九話 お菓子売りの少女
少し見たところその少女はどこか童話のマッチ売りの少女を連想させるような幸薄い様子で、パンとお菓子の保温用であろう小さな火の魔石こそ備え付けられているが紙が貼り合わされているボロボロの小さな屋台で必死にお菓子とパンを売っていた。
「ねえ、お兄ちゃんどうしたの?」
「いや、少しあの女の子が気になってな」
お菓子売りの少女を見ていると不意にルクスが何を見ているのか気になったらしく服の袖を引っ張りながら聞いてきたので指で指しながら答えた。そしてセラも口を開いた。
「あの娘、私たちより小さいのに親はどうしたのかしら?」
「セラ、少しお菓子かパンかを買って話を聞いてくるからルクスを頼む。どうしても気になる」
「ええ、わかったわ」
「いってらっしゃい」
親はどうしたのかという言葉に俺は逸る心を抑えきれなくなってしまった、どうしてもその少女のことが気になった俺はセラにルクスを任せて少女のところに向かう。
「今こちらは10人待ちです‼」
「おいまだか‼はやくしろ‼」
周囲では多くの立派な屋台が出、屋台によっては人集りができ、ガラの悪いガヤも聞こえてくるというのに少女の屋台の周りだけが酷く静かであるように感じられた。
「急で申し訳ないんだが、このパンとお菓子はそれぞれいくらだ?」
「え?ええと、パンが100ガンデアでお菓子が150ガンデアです。」
間近で見るとその少女はだいたい4歳程でルクスよりも小さかった。
「じゃあ、お菓子をもらおうか。はい150ガンデアぴったりだ。」
「あ、ありがとうございます」
お菓子を買った俺は色々と聞いてみることにした。
「小さいのに1人で呼び込んで、1人で物を売って偉いな。」
「え、あ、はい、ありがとうございます。あたしは別に偉くはないです。」
「どうして?」
「だって、病気のお父さんのお医者さんのためのお金を稼いでいるだけです。」
なるほど父親が病気なのか、でも、なら母親は?
「ええと、お父さんが病気でもお母さんがいるんじゃないのか?」
おそらく、一般的な考えではあまり深掘りすべきでない話題、自分でも少々過ぎた問いであったと思う、しかし、前世で両親のいなかった身からすれば、聞かずにはいられなかった。
「お母さんは1年前に魔物に襲われて死んじゃったんです。だからあたしがやるしかないんです。」
少女は語る内にどんどん涙ぐんでゆく…やってしまった。そんなにも壮絶だとは思ってもみなかったのだ。少女の涙を見て、俺も少し涙ぐんでしまう、事情があって親に守ってもらえない苦しみは嫌でもわかってしまうからだ。
「あ、じゃあパンももらおう。」
「はい…ありがとうございます。グスッ」
「あと、ごめんな、言いたくもないことを言わせてしまって」
「いえ…いいんです、昔お母さんが女神様と勇者様は私たちを見守っているって、だから頑張ったら、きっとお父さんの病気も治るはずなんです。グスッ」
それは空元気のようであった、見えないものを信じることは並大抵のことではない、きっともう信じて願うしかないのだろう。
俺は気まずくなり2人の元へ戻った。
「途中からあの娘泣き出したけど一体何があったの?」
俺は少女の父親が病で医者代が必要なこと、そして母親も魔物に襲われて死んだことを2人に伝えた。
「なるほどね、それは思った以上に大変な娘ね」
「かわいそう…」
2人は少女に心の底から同情していた。そんな2人に対して俺は提案することにした。
「なあ、ルゥ、セラ、2人が良ければあの娘の仕事を手伝ってやらないか?」
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