第十三話 騒動
駆けてくる男2人がこちらに向かってくるのを視認した刹那
俺は3人の方を振り返り、様子を確認した。
「なに?」
「何なの?」
「こわい」
3人は先ほどの声に恐怖や不安も手伝い戸惑っていた。
必ず守らなければ
そして再び振り返ると、あの男達はかなりの速度であったらしくもうかなり近くまで来ていた。
「オラァ」
小男の方が手斧を振り上げ、俺に振り下ろしてくる。
間に合うか?
「魔力槍生成」
「ちっ、ガキのくせになんて硬い槍だ」
魔力で生み出した透き通った薄紫の槍の柄で寸前のところで手斧を防ぐ。
物凄い馬鹿力だ。真正面からやり合えば間違いなく殺されてしまうだろう。
「ルクス、セラ、レイラ」
俺は槍で手斧と鍔迫り合いながら怯えている3人に力の限り叫ぶ。
「今すぐ逃げて巡回の兵士を呼んできてくれ、頼む」
先ずは何としてでも3人を逃さなくては
恐らくこの場に残していては人質や盾に使われてしまうだろう
「ふ、2人とも行くわよ!」
俺の言葉に少し落ち着きを取り戻したらしきセラはまだ怯えて動けないルクスとレイラの手を引き、駆け出す。
「おい、逃がすな、捕まえろ!」
「へい、兄貴」
小男が叫び、子分と思しき背の高い方の男が反応し、駆ける。
しかし
「させるか」
「くっ」
小男が大声を張り上げたことで手斧に込められる力が弱まった一瞬の隙を突いて全霊の力で押し返し、小男をぐらつかせ、
「魔力槍生成」
もう1本槍を生成し僅かな可能性に賭けて、子分に向けて投擲する。
頼む、当たってくれ
「ひっ‼」
あの子分が怯える声と共にその場に大人が崩れ落ちたような音が聞こえてきた。
チラリと見れば、恐怖で腰が抜けたのだろう、その場に座り込んでいた。恐らくしばらくは立ち上がれないだろう。
その隙に、3人は追いつけないくらい遠くへ逃げた。
「ちっ!邪魔してくれやがって」
立ち直った小男がイライラした様子で手斧を持ち直す。
「あんたら、盗賊だろう、何が目的だ?」
3人が遠くまで逃げおおせたことで、冷静さを取り戻した俺は、小男に問う。
「目的?そんなもん決まってんだろうが」
小男はこちらを見下したような目つきで睨んだ。
「お前らを奴隷として売っぱって1人で金持ちになるんだよ!」
奴隷か、大市場が発達していると聞いたことがあるし、あり得るか。
「特にお前みたいないかにも育ちの良さそうなガキはよく売れるしな」
瞬間、小男は強く踏み込み、駆け、こちらに手斧を振り下ろす、
(なるほど)
しかし俺は横に飛び退いてその一閃を回避する。
初撃で睨んだ通り、力やスピードこそあるが、予測も回避も容易い。
「いいのか⁉抵抗するならお前を殺しちまうぞ!」
小男は回避されたことで頭にさらに血が昇ったのだろう、大声で喚く。
それに対して俺は、落ち着き払い、槍を構え直しながら
「あんたこそ、いいのか?そんな攻撃じゃ、俺は殺せないぞ。」
敢えて煽る、さらに怒らせ、思考する余裕を奪うのだ。
「んだと、このクソガキ‼」
目論見通り、奴は顔を真っ赤にして怒り始めた。
「さあ来な。」
しかし、槍を握る俺の手には怒りによる力は入っていなかった。
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