第十話 名前
「うん、かわいそうな人は助けなきゃ」
「いいわね、手伝いましょう」
俺の提案に対して2人は思いの外強く賛成し、俺たちは今度は3人で少女の元へ向かう。
「ありがとう、じゃあ行こうあの娘を手伝いに」
「パンとお菓子は、パンとお菓子はいりませんか?」
少女は非常に逞しいことにもう立ち直り街往く人々に対してお菓子とパンを売り込んでいた。そしてその売り込みに人々も何人か足を止めパン、或いはお菓子を買っていた。
「よお、また会ったな。」
「あの、また何か用でしょうか?」
パンやお菓子を求める人々がほとんどいなくなったところで俺は再び少女に話しかけた。少女はまた話しかけられたことに対して少しキョトンとしているような様子だった。
「単刀直入に言うと、俺たちはあんたのことを手伝いたいんだ。」
「てつ...だう?」
「当然これは俺たちのわがままだ。だから嫌ならそれでもいいが、どうだ?」
「...はい、ぜひ、お願いします。」
俺たちの提案に対して少女は目を見開いて暫く言葉の意味を考え込んだあと、少し涙を流しながら俺たち3人が手伝うことを許してくれた。
「決まりだな、俺たちでパンとお菓子を売り込んで医者代を稼ぎを手伝うぞ。」
「がんばるぞ〜」
手伝うことが決まったこともありルクスは非常に張り切っていた。そして俺は1つ非常に重要なことを提案することにした。
「早速、手伝い開始としたいところだが、その前に名前を教え合わないか?お互いに名前がわからないと不便だからな。」
「え、あ、えっと、レイラです。」
少女はこころなしか少し嬉しそうにしているように見えた
「レイラか、教えてくれてありがとうな。俺はウィルだ。」
「これからよろしくねレイラちゃん!ぼくはルクス。」
「レイラね、とてもいい名前だと思うわ。私はセラ、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします!ウィルさん、ルクスさん、セラさん!」
少女、レイラは今度は涙こそそのままであったものの泣き笑いのような満面笑みで俺たちの名前を復唱していた。