天国の流行 〜エンマ大王がやってきた〜
先週、事件が起こった天国では先週のことが嘘だったかのような平和っぷりだ。
そんな平和な天国に、神様の兄弟がやってきた。
「お主ら!今日、わしは地獄の見学へ行ってくる。その代わりわしの兄弟。エンマ大王が天国にくるぞ!」
「えぇ〜!」
エンマ大王と聞くとすごく怖いイメージがある天国の住民、天使、青い鳥は表情でいやと抵抗した。
もちろん、神様も十分怖いけれどエンマ大王は神様以上に怖いかと思うと、鳥肌が立ってくる。
「それでは。」
神様はそそくさと雲に乗っていってしまった。
「エンマ大王って、絶対怖いに決まってるわよ!」
青い鳥は長い口ばしをとんがらせて言った。
「そうそう!絶対、私たちが何もしなくても怒ってきそうだよねぇ〜。」
「あなたが言わないでちょうだいっ!」
怠けて言った住民は先週、天国のみんながルール違反をしていたことを神様に報告…いや、チクっていた住民だ。
「そうよ!なんで今になって、怠けているのよ!」
「チクったくせにぃ〜!」
住民や、青い鳥が口をそろえて言った。そんな中、一人の天使がため息をついて、
「とはいえ、今日は全く自由になれなさそうね。」
「うへぇ〜。」
どんよりした空気の中でいきなり大きくずぶとい声が響いた。
「お主らがぁ、天国のぉ、奴らかぁ〜!!」
「うげっ!!」
大きくずぶとい声にみんなが驚いた。さっきの天使が前に出て、
「えぇ。そうです。」
「ん?もう少しぃ〜!大きなぁ〜、声でぇ〜言ってもらえるかぁ〜??」
「えぇ!!!そうですぅ!!」
「なんて言ったぁ〜???!!!」
「もういいわ。」
最後、天使は小声でぼそっと言った。
「めっちゃ耳、悪いやん…」
「そうね。」
そうすると、天使は紙に “こっちに来てください!“ と書いて、遠くにいるエンマ大王に見せた。
するとエンマ大王は目をしかめて、『ん?』と言わんばかりの顔で首を傾げた。
「もうっ!!」
いつもは冷静沈着な天使がキレた。そうしたら青い鳥が苦笑いをして、
「あの人絶対、老眼だよ!」
「そうね。はぁ〜。」
天使はため息をついて、エンマ大王を連れてくるのだった。
「いやぁ〜。悪かったな!」
頭をかきながらエンマ大王はずぶとい声で言った。
「それじゃ、私たちは仕事に戻るので。」
そう言い残して行こうとした天使たちに、
「お主らが仕事をまともにしないことは弟から聞いておるぞぉ。今日はまともに仕事をするのじゃな!」
「くぅ〜!!」
「気にしないの。」
煽るエンマ大王を残して、天使たちは仕事に専念した。
昼、お腹を空かせた天国の住民、青い鳥、天使たちが広場の木陰へやってきた。
ランチタイムと言って、みんなで木陰に色とりどりのシートを敷きお弁当を食べる時間だ。
みんな、この時間を楽しみに仕事をしていると言っても過言ではない。
「だはぁ〜。疲れたぁ〜!」
「お疲れー!」
「わっ!マノンのお弁当美味しそう!」
「そんなことないよ!」
こんなふうに会話が弾む。ここはみんなのゆとりの場だ。
お弁当が終わり、アフタヌーンティータイム。この時間は青い鳥たちが作ったアフタヌーンティーをゆっくり楽しむ時間だ。今日は色とりどりなシートの上にパステルカラーが可愛いとっても大きなトゥンカロン、クリームたっぷりみずみずしいフルーツがたくさん、ふわふわスポンジのケーキ。真っ赤な苺ジャム、綺麗な紫色のブルーベリージャムがサンドされたサンドウィッチ。どれも美味しそうなのでらみんなの目がキラッと光った。
「うわぁ〜!」
「美味しそう!」
「早く食べようっ。」
それから天国のみんなはアフタヌーンティーを楽しんだ後に、仕事に戻った。
やがて太陽が姿を消し、月が顔を出した。
「いやぁ〜。実に天国は充実していたな!では!」
と言ってエンマ大王は真っ赤な雲に乗り、帰って行った。
月に向かって飛んでいくエンマ大王を眺めながら天使たちは花束のように光る街へ帰って行った。
その時、神様は頭を抱えていた。
「マジで勘弁してくれい…。」