出会い
「やぁ、田中 幸君!ボクは天使だよ!」
俺はその一言と、空から舞い降りてきた君を見て、混乱した。
「だっ、だだだ、は、???え?」
君の頭上に浮かぶ金色のリングと、君の背中に生える真っ白な美しく大きい羽。そんな君の見た目と、俺の名前を知っていることへの、少しの恐怖の意味のわからなさで変な声が出た。
「おー、混乱してるねぇ、田中 幸君!」
「…????」
「君には、天国に行ってもらわないと行けないから、ボクが君をすんばらしい、聖人にしてあげるよ!」
「…誰?」
初めてきちんと出た声がこれだ。
「あははははッw!!!初めて言う言葉が、それかい?先に言っただろう?ボクは天使さ!」
同じ事を繰り返された。
「…てん、し?」
「君、学校行ったこと無いのかい?」
酷い言い様だ。
「いやあるけど」
「じゃあ、知っているでしょう?あの有名な天使だよ。天国にいるっていう、あの。」
「う、嘘だろ?そんなのが実在するわけ…」
「実在するから、ここにいるんだよ。本当に君、日本語話せる?あーゆーじゃぱにーずぴーぽー??」
煽りの天使か??
「YESだよ!!てか何なんだよ、いきなり窓から入ってきて!天使だろうが、なんだろうが、知ったこっちゃねえよ!!早く出てけ!!!」
「20XX年12/25」
「はぁっ?」
「君が死ぬ日だよ」
今日は、20XX年10/18だ。
「は、な、何言って…」
「見る?君が死ぬ瞬間を。」
そう言って、君が目の前に映し出したのは地獄絵図だった。
『キャーーーー!!!!!!!!』『嫌だー!!!!』『おい、誰か救急車を!』『私には子供がいるんです!!助けてくだ、ああああ!!!!!!』『待ってくれ!!金ならいくらでもやる!!』
「20XX年12/25に、君は無差別殺人事件に巻き込まれて、死ぬ。」
「い、嫌だ、…嫌だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「もがいても無意味だよ。死ぬ運命は変えられない。しかも!お客様、死んだら地獄に行くんですよ〜!お得ですね〜!」
「そんな、…」
「でも、ボク達天使は優しいからねっ!地獄じゃなくて天国に行ける方法を君に教えてあげようと思って!」
「あるのかっ!?教えてくれっ!!!頼むっ!!!!」
「だーかーらー、聖人になればいーのっ!」
「聖人…」
「聖なる人と書いて聖人。あのー、あれだよ。善人になれってこと。君、ぜんっぜん悪人だからね。煙草とか。あれ、けっこー不味いよ。やめたほうがいい!ま、とにかくそんな感じ。今日からボクが君を聖人にしてあげるから、よろしくね!!田中 幸くん!!!!」
ここから、俺の聖人になるための生活が始まった。