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春日部てんこの異世界器用貧乏  作者: O.K.Applefield
1章
9/189

1-7

 次の日。

 私はもう一度、村まで下りて行った。

 さすがに、100Kg以上ある熊の解体は私一人ではどうしようもない。

 ジョージさん一家にモンスターを倒したことを報告する。

「ほ、本当に倒したのか?」

「まあ、まあ、それよりも無事で何よりだわ」

 驚き半分、安心した感じ半分で、そう言ってくれた。


 ジョージさんと村の人数人が、現場まで登ってきてくれた。

 みんなで協力して、皮を剥ぎ、解体する。

「すげえな、本当に熊のモンスターだぜ」「村一番の猟師だったジム爺さんでも敵わなかったのに、こんな若い娘さんがねえ」「何より、また山に山菜取りに入れるのがありがてえな」

 作業しながら口々に私を褒めるので、少し恥ずかしい。

 肉の半分は村の人たちに差し上げる事にした。

 毒を使ったので、食べられないかもと思ったが、使った毒草の特徴を村の詳しい人に伝えたら、血液に回った分くらいは血抜きしてあれば大丈夫だと教わった。

 そうだよね、この辺に生えてる草だから、レベル1のスキルより、地元の人の方が詳しくても可笑しくない。最初から聞いておけばよかった。

 私は残り半分の肉と、皮をもらう。

 それと、熊の体内、心臓の近くにあった拳大の石『魔石』も私の物だ。

 これが有る獣のことを一般にモンスターと言うらしい。

 大気中に存在する魔素が長い年月をかけ大型の野生動物の体内で結晶化したもので、高レベルの術者がこれを使うことで、強力な魔法が使えるようになる。

 まあ、私は攻撃魔法レベル1しか使えないから、無用の長物なのだが、それでも売れば結構な金額になるらしい。

「それじゃ、お疲れさまでした」

「おう、お疲れ」「肉ありがとな」「また何かあったら呼んでくれ」

 解体が終わり、熊肉を持って村の人たちが帰っていく。

 私も山小屋に入った。

 ジョージさんのお父さんの物だったこの小屋は、正式に私が使っても良いことになった。

 熊と鹿の肉が部屋の隅にたっぷりと積まれてある。

 これで、当分食料には困らないだろう。

 腐らない様に燻製にしなければいけないが。

 あとは、皮の鞣し作業が明日から大変そうだ。

「とりあえず、晩ごはん」

 今日はせっかくだし熊鍋にしよう。

 熊のバラの辺りの肉と山菜を、昨日村の雑貨屋で買ってきたよく分からない調味料で味付けしてみる。

 調味料はペースト状で、少し味見してみると味噌のような味がした。

 が、後味にきつい苦みと香りが来る。

「うぐっ、なんだこれ」

 思わず声が出る。

 味噌のように大豆とか麦を発酵させた物なのだろうが、それに何かのハーブを混ぜ込んでいるみたいだ。

 お父さんの田舎の『ばっけみそ』みたいな感じだが、苦みがフキノトウのそれより遥かにきつい。

「大丈夫なのかこれ?」

 一応売っているものなので、大丈夫なのだろうけど、試しに様子を見ながら少しずつ入れてみる。

 お湯に溶かせば、苦みと独特の香りは多少はマシになった。

 ジョージさん家でご馳走になった鹿鍋に使ってた調味料って、多分これだ。

 でも、あの時より苦みがきついのはなんでだろう。

 何か工夫が要るのだろうか?

 とりあえず入れすぎるとダメそうなので、少しだけ入れて、足りない塩気は、塩を追加して補った。

 肉に火が通ったら、盛り付けて、頂く。

 倒した後、血抜きはしたが、しばらくそのまま放置したので、肉に臭みが付いている。

 調味料のハーブが臭み消しになっているが、それでも消し切れていない。

 もう少し調味料を入れればいいのかとも思ったが、入れすぎるとハーブが主張しすぎてダメな感じだ。

「食べれないほど不味くはないけど、あんまり美味しくない」 

 こっちに来て、初めて料理を失敗したかもしれない。

 それでも、盛り付けた分は全部食べ切った。

 残りは明日の朝、何か味変を試してみよう。

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