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私の豪運は決着を届ける。

私が魔剣を構えた瞬間、水中から細長い糸が次々と飛び出した。

少し離れた木々をまるでバターを切るかのようになめらかになぎ倒していく。


「なんて威力・・・・ロモさん!!」


「大丈夫にゃ!」


こちらを絡め取るように次々と放たれる高圧水流を的確に回避していく。

数と速度は2年前のあの時の比ではないが、明らかにゴブリンの魔技よりも遅い。

あの時の感覚が蘇り更に動きが研ぎ澄まされていく。


(あの時から若干強くなったようじゃが自惚れが過ぎるのう!小娘!)


それと同時に何かを放つためにリヴァイアサンは大きく口を開ける。

(何!?い、居ないじゃと!?)


「そうにゃね。あの時よりはお互い強くなってるにゃね。」


(いつの間に!!)


私は空を飛ぶように爆発の魔技を使用して、水面に居る奴の背後に回り込んでいた。

この時のために、水上を想定した戦闘とあの技は毎日のように練習していたのだ。


「演舞!阿修羅!」


奴の周りを取り囲むように、次々と花火のような爆発が起こり始める。

(な、何なのだこれは!!)


速度が乗ってきたところで私は奴に対して魔剣を振りかざすと、鱗に当たった瞬間、魔技を次々と叩き込む。

爆発が魔剣に伝わり鈍い音が響いた瞬間、硬い鱗を砕きながら魔剣が奴の体に食い込んだ。


(ぐっ・・・・な、なぜワシの鱗が砕けるのじゃ!?)


「これならいけるにゃ!!」


水神龍リヴァイアサンには2つの武器があった。

1つは体内で極限まで圧縮され、岩ですら易易と切り刻む高圧水流。

2つ目は龍族の中でも最高硬度とされる全身を覆う鱗であった。

それは深海の高い水圧にも耐え、転生者の特典武器だろうが一切の剣撃を無効に出来るほどの性能であった。


彼が伝説級モンスターのマグナ=クエークと肩を並べられたのは、そのような最強の矛と盾を備えているからに他ならない。

長年に渡りその武器を磨き続け、頼り続けてきた彼だからこそ今の状況が理解できなかった。

目の前の小娘が高々2年程度で編み出した技で、築いてきた牙城が崩されかけているこの瞬間ほど屈辱的なものもなかったのである。


(き、貴様っ!!この威力、どうやってっ!?)


「お前を倒すためにアイツが力を貸してくれたんだにゃ!!」


(小娘ごときがぁあああああああああッ!!)


爆発を脇腹に叩き込み、その衝撃で浮き上がるであろう反対側の顔面に回り込んで新たに魔技を叩き込む。

サンドバッグのように連続して魔技を叩き込まれたその巨体は次第に動きが鈍くなっていく。

次第に爆発の頻度は少なくなり、水面にはリヴァイアサンの巨体が浮かんでいた。


その様子を見ていた少女は遠くで歓喜の声を上げていた。


「ロモさん!やりましたよ!」


「はぁっ、はぁっ・・・・や、やったにゃ。」


赤く染まった海面に浮かぶ、彼方此方の鱗を砕かれ肉を引き裂かれた巨体の上で一人の獣人が立ち尽くしていた。

それを全うしたであろう魔剣は本来の金属光沢を失い、それを振るった本人も同様に返り血で全く違った様相を呈している。

辺りの穏やかな景色とは相対して、そこだけが悪夢から這い出てきた地獄といった様子でその中心には魔神が佇んでいた。


それを見ていた少女は始めこそ歓迎していたものの、その様子が異様であると気が付き始め次第にトラウマになっている映像と重ね合わせていた。

少女は阿修羅や鬼神が存在するとすればこの事を言うのだと、そして自分の目指していた剣の行き着く先を想像して恐怖を感じていた。


(わ、私は・・・・・)


そんな少女を尻目に獣人は考え込んでいた。

(自分の下に居るコイツは2年前親友を一度は殺害し、あまつさえ私達を絶望の淵へと突き落とした因縁の相手・・・。)


あれほど復習を望んだ相手を圧倒的な実力差でねじ伏せ、敵討ちを果たしたものの手に入れた勝利はなぜか空虚であった。

その親友が生き延びて敵に回っていたという事もあるのだろうが何処かやるせない気持ちになっていた。


敵討ちがこれほどまでに切ないものなのだろうか・・・と思いつつ唇を噛みしめる。


「こんにゃ奴に・・・。」


「ロモさん!」


(所詮、小娘・・・甘いわッ!!)


リヴァイアサンの尻尾が、こちらをなぎ払う形で水中から飛び出す。

物思いにふけっていたところを狙ったようだが、当然この程度の不意打ちなど想定済みであった。


「これしき!!」


私が魔技を使って一旦空中に逃げようとした瞬間、あの嫌な音が響いた。


パキン



一瞬の喧騒を割り込むようにして、その切ない音だけが耳に飛び込んだかと思えば私の視線はある一点に集まる。

案の定、魔剣に埋め込まれていたであろうスフィアが砕け散っていた。


(しまっ・・・・)


その思いが脳裏に駆け巡りながら、体がゆっくりと重力に引っ張られていくと同時に視界が上を向く。

それは私の思いをあざ笑うかのように晴れ渡り、脳天気にも呑気に雲を浮かべていた。


凄まじい衝撃と共に視界が空中から一瞬で水中に切り替わり、意識が朦朧とする。


(尻尾による一撃・・・やられたにゃ・・。)


先程のリヴァイアサンの怒りに満ちた態度とは打って変わって、ご機嫌そうな思念が頭に叩き込まれた。

(そう、この時を待っていたのだ。まだまだ青いのう子猫娘・・・そしてワシはやはり運が良い!)


沈んでいく魔剣を尻目に、辛うじて動かせる左腕を腰の短剣に当てるも辺りに奴の姿はない。


(そうか・・・動けない私に最大威力の技を叩き込む為に・・・・どうすれば・・・・。)


絶体絶命の状況と打って変わって辺りには優しい光が溢れていた。

それはさながら懺悔の時間とでも言うべきであろうか、心の中で此処までの流れに思いを馳せながら己の無力さを後悔していた。

その光に唆されたのか私は構えていた左腕をゆっくりと降ろすと、私から力が抜けるかのようにゆっくりと吐き出した泡が水面へと登っていく。

偉そうに言い放った挙げ句、この結末・・・つくづく人生とは思い通りにならない事を実感する。


(何度目なのか・・・私の人生は何をしても最終的には報われない・・・。)


(クッション・・・クッションてば!こっち!)


(にゃ・・・またか・・・もういいにゃ・・・このまま・・・)


(何いってんのほら、こっち!)


近づいてくる微かな光に目を覚ますとアイツの姿が水中に浮かび上がっていた。


(レノ!?)


改めて見直すと水面から明るい光と共にアイツが手を差し出している。


(もう少しだから。手を伸ばして・・・。)


(うぅ・・・・。)


私は痛みを堪えながら、最大限の力を振り絞りその手にしがみつく。

その暖かな光を力強くそれを握りしめた。


(これは・・・・・。微かに感触が・・・・。)


暖かな握ったそれをゆっくりと開くと、若干欠けている黄色いスフィアブレットがそこにはあった。

それは偶然にも2年前、私がリヴァイアサンにとどめを刺そうとして銃に込めた物であった。

あの時は不発に終わったが、焦りからか力強く込めたせいで欠けたのを覚えている。


(どうしてこれが・・・・ともかく・・・ありがとうにゃ、レノ。)


リヴァイアサンが猛スピードで口を開けながらこちらに向かってくる。

よく見ると奴の動きが若干ブレているのがわかる、どうやらお互いこれが最後のようだ。


(最後だ、小娘!!)


私はそれを力強く握りしめて、手を伸ばした。


(あぁ・・・お前がにゃ!!!)


次の瞬間、海面がまばゆい光を放ったかと思えば、続けざまに凄まじい雷撃が水面を這うように飛び出した。

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