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私の豪運は再開を届ける。

今、私は普段見慣れた場所で奇想天外とも呼べる状況に置かれていた。

恐らくそれを作り出すアイツでさえこの状況は予測できなかったに違いない。


頭では何処か懐かしい気配を感じていたがそれを辿るまでには至らなかった。

なぜならそこに居たのは予測する必要のない人物だったのだから。


「なぜ、お前が此処に居るにゃ・・・・というかどうして・・・・」


「おひさしぶりですね。ロモさん・・・。」


漆黒の翼に尻尾、真紅の瞳に整った顔を見た瞬間アイツだと確信した。

「レア・・・お前・・・あの時、死んだはずじゃ・・・。」


「はい、確かにあの時私はすでに・・・。」


全く予期しなかった展開に私は本来出すべき感情と少女が話したであろう真実を聞き逃した。

2年前、確かに私達の目の前で、少女はリヴァイアサンの放った攻撃により絶命したはずだった。

地面に横たわり生気を失った少女の瞳と目があった映像が今でも強烈に脳裏に残っている。


(何かがおかしい・・・・)


そう感じた私は万が一を考えて、何者かによる擬態の可能性を考慮するも、匂いとオーラは不思議なほど一致していた。

振る舞いからしても、あの不幸な少女に間違いないのだろう・・・。



一瞬のうちに長考を済ませた私は、少しずつ戻ってきた感情に身を任せる。

次第に体が震えだしたかと思えば少女を抱きしめていた。


「お、お前!どれだけ心配したか!!」


「この感触、懐かしいですね・・・ごめんなさい・・・。」


少女の柔らかな手が私の背中を撫でる。少し懐かしい感覚だった。


改めて闘技場での魔力のやり取りからアイツが生きていることは予見していたが、その親友までも生存しているとは思っても見なかった。

つまり私の仲間はあれから全員無事ということだ・・・そう思いながら私は少し微笑んだ。

(あの状況を作り出した少女の不運と足し合わせても、あいつの豪運が勝っていたということだろう・・・。)


「結果良ければいいにゃ。それよりも大変にゃよ!」


「はい!ロモさん!私と一緒に来てください!」


「あぁ・・・だけど外に仲間を置いてきたから、待ってろにゃ・・・」


その様子を隠れて見ていたであろう人物がそれを制止する。


「なんで・・・生きて・・・もしかして幽霊ですか?!」


「アイネ、外で待ってろって言ったにゃ。」


「ロモさんごめんさなさい。物音がしたのでつい・・・・」


「確か、あなたは・・・2年前の船に乗っていた冒険者の・・・」


「アイネと申します。」


「そうですか、ロモさんと一緒に・・・。」


アイネの穏やかな表情が一点を見つめた瞬間に強ばった。

「あなたの腕章のその紋章・・・龍族の・・・・」


少女の姿に気を取られていたが龍族の特徴ある赤色と龍のデザインをした紋章が印された腕章が腕に巻かれていた。


「龍族!?レアどういうことにゃ!?」


すると少女は驚くべき言葉を放った。


「私・・・今は龍族として活動しています。」


「!?」


そもそも2年前、あの地で惨劇を起こしたのは龍族だった。

種族が近いとは言え、自分を一旦は殺めた憎きリヴァイアサン達を許しそれに協力する・・・・。

いくら元貴族階級の優しい少女がそれを許すはずもないのだが・・・それに生きている理由といい、謎が深まるばかりであった。


「つまり、私達の・・・敵ってことですか・・・。」


「はい・・・有り体に言えば。」


「お前の仇のはずじゃ・・・どうしてにゃ・・・。」


目の前の少女は何か重大なことを言いたそうにしながら沈黙を続ける。


「そうですか・・・それが答えなんですね・・・。ごめんなさい・・・。」


「アイネ、待つにゃ!」


アイネはその言葉を言い放つ瞬間に、腰に下げていたであろう魔剣を振り放っていた。

その振り放った剣は翼にすら届きはせずにいつの間にか伸ばしていたレアの手に収まっていた。

私に迫ろうという勢いで鍛錬を日々続け、油断すれば見逃してしまうほどのアイネの剣撃を少女は見切ったのだ。


「なっ・・・素手で魔剣を!?」

「にゃに!?」


「私はもう・・・何も・・・」


何かを呟いたレアは、そのままアイネの魔剣を素早く取り上げて近くに放り投げた。

以前の弱々しい少女はそこにはなく、決意が固まった顔でこちらを見て手を差し伸べた。

2年で精神的にも肉体的にもかなりの強さになっている、おそらく私以上だろう。

(だが2年でどうやってそこまでの強さを・・・。)


「さぁ!ロモさん行きましょう。」


私はそれに手を伸ばす。

「ちょっと!事情を説明してもらわないと、あなたにロモさんは渡せません!!」


「アイネ・・・」


「わかりました・・・」


少女が話そうとした瞬間、忌まわしい声が脳内に届く。

(用事はすんだか、小娘!)


「!!!この声は!?まさか!」


「えぇ、リヴァイアサンです。時間がありません・・・後は頼みます。」


(仕方ないやつじゃのう。)


次の瞬間、視界に水飛沫が映ったかと思うと景色が一変した。

家の大部分が吹き飛び私達の体は宙に舞ったかと思うと天井が大空に切り替わっていたのだ。


「きゃぁっ!!」

「んにゃぁっ!」


ゆっくりと起き上がろうとすると私はレアを見上げる形で地面に伏せていた。

目の前の少女は家が吹き飛ぶほどの風を受けながらも平然とした表情で、親友の形見である銃を背中に背負い翼を広げる。


「うぅ・・・・ま、待つにゃ!」


「ごめんなさい、ロモさん。」


「そいつはお前の仇じゃ無いのかにゃ・・・何で!?」


「えぇ、でも今は仲間です。事情はまた会ったときにでも説明しましょう。」


「ああっ、待って!」


顔を上げたアイネが地面に落ちていた魔剣を拾おうと手をゆっくり伸ばす。

その一瞬のうちに少女は漆黒の翼を広げたと思えば、上空へと浮き上がっていた。


「うぅっ・・・。杖が・・・でも一体何のために・・・」

「わからないにゃ・・・でも今は目の前の別の問題を片付けたほうが良さそうだにゃ。」


手袋の袖を引っ張り気合を入れ直した私は、アイネの魔剣を拾い直す。

「此処は任せて、アイネは遠くに逃げるにゃ。」


「え、でもロモさん一人で伝説級の龍族相手なんて無茶ですよ!」


「私は良いから早く行くにゃ!」


「は、はい!」


魔剣を右手に持ち変えて、ゆっくりと歩きながら浜辺に居るアイツに近づく。

先程の出来事を忘れる様に、湧き上がる感情を殺すように、ゆっくりと深呼吸をしながら足を一歩ずつ進めた。

アイネのように若ければ即座に感情に身を任せ剣を振るうだろうが、長年の経験を持つ私であればそうはしない。

どうにもならないときもあれば、どうとでもなる時がある・・・今がそうなのだ。そして感情的になるのはとどめを刺す時でいい。


(チッ、あの小娘め、面倒をワシに丸投げしおって・・・。ククッ、にしてもお主も運が悪いやつよのう・・・。)


「いや、私は運が良いにゃ。」


(ほう、運が良いとぬかすか。)


「あぁ恐らく人生で最高にゃ・・・。」


(面白い!望み通り、あの時のように細切れにしてやる!)


「あの時とは違う・・・。今の私になら!!」


そう言い放つと私は魔剣を握る手に一層力を込めた。

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