私の豪運は襲撃を届ける。
あれから私はどうなったのだろう。
あのゴブリン同様、魔力切れで倒れたはずだがなんともハッキリとしない・・・。
無事優勝してアイネやお世話になった住民に恩返しが出来たのだろうか。
何かを・・・何か、大切なことを忘れている気がする・・・。
「ロモさん!!起きてください!!」
「うぅ・・・・」
アイネの声を頼りに、周りの状況が私の耳にゆっくりと入ってくる。
金属がぶつかり合い、時折爆発音が聞こえる・・・どうやらあれから盛大な授与式というわけでもなさそうだ。
どうやら決勝が終わった後、私が眠っている間に何かがあったようだ。
「あれから・・・あれからどうなったにゃ!?」
「それが大変なんです!龍族がこの島に攻めてきたんですよ!!」
その言葉を聞いて飛び起きた。
「龍族!?」
(この島国に攻めてくるとすれば、水棲型の龍族・・・・奴しか居ない。)
私の恐れていたことがこの島に起きたのである。
あの状況は一秒たりとも忘れることはない・・・仲間が目の前で殺され、自身の無力さを痛いほど実感した・・・。
夢の中で何度も後悔した光景が現実のものとなりつつあった私は唾を飲み込みながら、背中から冷や汗を垂らしていた。
下を俯き、呼吸が次第に乱れていくのを感じた私は胸に手を当てる。
「に、2年前と同じことが・・・。」
「ロモさん・・・落ち着いて!」
「お前たちだけでも良いから、逃げるにゃ!」
「何言ってるんですか。2年前とは違いますよ。」
「そうだよ、おねーちゃん」
「襲撃場所は!?」
「ここと島の反対側です!皆さんはそっちに向かわれました!」
「分かったにゃ!!」
私が急ぎ向かおうとした瞬間、何かが落ちた。
カラン
それは魔剣に埋め込まれているはずのスフィアだった。
「ロモさん、魔剣が!」
「おねーちゃん、魔剣壊した。」
スフィアの落ちた音で私は現状を冷静に判断し始めた。
(私の居場所はバレていないはず・・・だとすると奴らの目的は一体・・・)
「これじゃあ、戦えませんよ・・・・」
「そもそも敵は海の中だから、おねーちゃんじゃ無理だよ。」
「となると、残る手段はあれしか無いにゃ。」
親友の漆黒の対物ライフルが脳裏に浮かぶ。
本来は扱えないはずのあれならある程度は、今の魔力に耐えられるだろう。
「ロモさん、あの黒い・・・杖ですよね!」
「にゃ!」
「あれって杖だったんだー」
「そうにゃ。取りに戻るにゃ。」
「そうですね。」
「私は残るけど、おねーちゃん達、気をつけてね。」
「お前もにゃ。」
私とアイネは闘技場から外に出た。
どんよりとした空を背景にして、彼方此方にモンスターの死体が散乱していた。
「やはり、水棲型のモンスター・・・となると・・・。」
見渡す限りは、島の住民と思われる人は倒れていない。
さすがは日々闘技場で行われるモンスターとの戦いを楽しんでいる戦闘民族と言った所か。
「もしかして、ロモさんの出る幕は無いんじゃ・・・・」
「私も思ってたにゃ。」
私の背後に倒れていたモンスターが突然起き上がり、持っていた短剣でこちらに襲いかかってきた。
「グォオオオオオ!」
「ロモさん!」
アイネが即座に剣を引き抜き、刹那にモンスターを切り刻んでいた。
ゆっくりと彼女は剣を布に通して鞘に納める。
「さすがだにゃ。」
「ロモさんに追いつくにはこれぐらい出来て当然ですよ。」
平然としているが、声色から承認欲求に対して少し不満があるのだろう。
親友に出会う前にテウリアの道場で指導者としてやっていた私からすると、流石に彼女をもう少し褒めたほうが良いだろうと感じた。
背伸びをしながら優しく彼女の頭を撫でる。
「えらいにゃー」
「ろ、ロモさん!?子供じゃあるまいし、流石に恥ずかしいですよ。」
「いいじゃにゃいか・・・。努力してる人を応援するのは当然にゃ。」
彼女は顔を赤らめて恥ずかしそうにうつむいていた。
「うぅ・・・・。あ、ありがとうございます。」
しばらく警戒しながら歩きつつ無事たどり着いた。
「にしてもあらかた倒されていましたね・・・・」
「流石、キラーゴブリンを倒しまくってる民族にゃ。」
アイネが家の扉に手を掛けようとした時、手を阻止した。
「待つにゃ。」
「ロモさん!?て、手が当たってます!!」
「そうじゃにゃい。誰か居るにゃ・・・。」
「えっ・・・。でも音もしないし・・・・。」
誰も居ないはずの家の中から気配が微かにする。
「お前は待ってるにゃ。」
「分かりました。」
素早く外壁を登り2階から侵入する。
長年の経験からそのほうが見つかりにくいのだ。
「ロモさん・・凄い・・。」
恐る恐る、2階の窓から室内を覗く。
どうやら2階には居なさそうなので窓から家に侵入する。
気配は1階の私の寝ていた部屋から微かに感じる。
(目的は、私と同じく杖・・・・。)
だとすると・・・このタイミングでそれをする相手に心当たりがない。
そしてそれを杖だと知っている人物・・・・余計にわからなくなってきた。
魔剣に手を当てながら、ゆっくりと1階に降りていく。
この家の主の大男は戦闘に出ているだろうし、とすると最強の魔法使いの子孫であるリロ辺りか・・・。
そんな思いが頭を駆け巡った。
(扉が空いている・・・・!?)
私の寝室の前にたどり着くと気配を強く感じる。
完全には気配を隠しきれていないことから手練ではないことだけはわかる。
ゆっくり隙間からその人物を覗いた。




