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私の豪運は鍛錬を届ける。

サンサンと降り注ぐ日光に照らされた美しい砂浜を彩るようにして植えられていたヤシの木の下で私は腕立て伏せをしていた。

痩せたいとか、脳筋になったとかではなく単に2年間で落ちきっていた筋力やら体力を取り戻すためだ。


やっているうちに暖かい海風もあり貨物船で親友から聞いた思い出話の師匠とやらを思い出していた。

そう・・・あの親友は生きている・・・運だけではない、窮地でも諦めなかった胆力に私は掛けた。

そして2年の間、召喚されなかったとすればアイツは身動きが取れない状況にあるのだろうと思い、こうやって鍛錬をしている。


「努力・・・努力・・・努力・・・。」


時折、暇つぶしにそう言いながら腕立て伏せをしていた。

隣では、鍛錬のために鞘の付いた状態の剣を、アイネが苦笑いをしながら振るっていた。


「そ、そのロモさん・・・地味に気持ち悪いですよ。」


「猫さん、変なのー。」


そう言いながら重し代わりに私の背中に載っていた少女にからかわれる。


「うるさいにゃ。黙って載ってろにゃ。」


「暇だよぉ・・・・。」


そう言いながら少女は私の脇腹に手を当てて、くすぐってきた。

私は腹筋に更に力を入れながら耐える。


「が、ガキ!」


「お、固くなった!おもしろーい。」


私はそのまま重心を前に移動させて腕立てから逆立ち体勢に移行させる。

私の足が浮き始め、ゆっくりと背中に載っている少女の重心も頭側へと移動していった。

「危ないよ、猫さん!」


「邪魔するなら降りるにゃ。」


ある角度を迎えたところで少女は私の背中から地面に転げ落ちた。


「いっ!うぅ・・・・」


「危ないですよ。ロモさん。」


逆立ちの状態で腕立て伏せを開始した。

これで少女からの邪魔も入らないだろう。

その様子を少女たちはまじまじと見ている。


「おねーちゃん凄いね。」


「そうだにゃ、日頃の鍛錬の成果にゃ!」


「ロモさん・・・その・・・パンツ丸見えですよ・・・黒色・・・」


「にゃ?にゃぁあああああああ!」


私は慌ててスカートで隠した。

その後普通に腕立てを300回ほどやって私はタオルで汗を拭き取っていた。


「なんだか、格好いいですね。」


「ありがとうにゃ。んじゃ、やるかにゃ。」


近くにあった稽古用の木刀を手に取る。

「えっ!?終わりじゃないんですか??」


「ウォーミングアップにゃよ?」


「ば、化物・・・いや、化け猫ですね・・・・」


「おねーちゃん、化け猫ー」


その後、穏やかな潮騒だけが響き渡るはずの浜辺では、木刀がぶつかり合う音が鳴り響く。

やはり私の目に狂いはなく、2年前に弱々しかった冒険者は強くなっていた。

技術だけではない、私に軽々と太刀筋を何度受け流されても諦めずに表情を崩さずに振り掛かってくる。


「やるにゃね・・・。」


「2年でも追いつけませんか・・・。」


「2年ごときでは無理にゃよ。」


その言葉を聞いたアイネの動きが一瞬固くなる。

そこを見逃さなかった私は、即座に彼女の木刀を弾き飛ばした。


「にゃ!」


「いっ・・・。」


「極の私にここまでやるのは凄いにゃ。」


「ちょっと待ってください!!剣術の一流とされる・・・極の称号をもってるんですか!?」


「そうにゃよ?」


「それなら2年では無理ですね。というか極を取れるのは冒険者でもベテランぐらいですけど一体何歳なんですか?」


「乙女の秘密にゃ・・・。それよりも続きにゃ。」


「はい、仇を討つんですよね?」


「にゃ!」


「おねーちゃんたち、がんばえー。」


いつの間にか少女の近くに居た男が話しかけてきた。

「何だ?譲ちゃん強くなりてえのか?」


「パパー!」


「そんなところにゃ。」


「ならいい場所がある。ついてきな!」


少女の父親に連れて行ってもらったのがこの島の唯一の娯楽施設、闘技場であった。

闘技場と言っても人同士ではなく、人とモンスターが戦う場所だった。

「ここが闘技場さ。」


「こんなところがあるんですね。」


闘技場の中央の広場には草原に家のような障害物が並んでおり、それを取り囲むようにしてレンガで観戦席が用意されている。

丁度戦士のような人物とゴブリンのようなモンスターが戦っていて、方方から歓声が上がっていた。

「どうだ譲ちゃん、すげーだろ。」


「ま、待つにゃ。あれはゴブリンの上位種だにゃ?」


「あぁ、キラーゴブリンだな。」


筋骨隆々で人間よりも一回りも大きなモンスターに私は心当たりがあった。

それはギルドで時たま出てくる高難易度クエストの依頼書でよく見る風貌であった。


「しかもこの島のそいつは特別でな、攻撃、防御、スピード共に通常種の倍以上だぜ!」


「ちょっと待つにゃ。一人じゃ死ぬにゃよ!」


「まぁ見てな。」


そのゴブリンは私と遜色そんしょくない速度を誇っていて目で追うのがやっとだった。

戦士はその体付きからは想像できないしなやかさで踊るように攻撃を避けて、ゴブリンに剣を斬りかかる様に近づけたかと思えばその瞬間剣が爆発した。

その衝撃でゴブリンは広場の端の壁まで叩きつけられていた。


次の瞬間一斉に歓声が上がった。

「わーっ!!」


戦士は少し焦げた剣を布でぬぐい、綺麗にしてから華麗にさやに収めた。


「どういうことにゃ!?」

「剣から魔法が出ましたよ!?」


「譲ちゃん達はアロハの悪魔を知らないのかい?」

「アロハの悪魔ってもしかして!?」

「知ってるにゃ。」


それはこの地方特有の災害とでも言うのか、魔物被害のことである。

おそらくその魔物であろうキラーゴブリンは物理、魔法耐性が高くこの地域では猛威を振るっていた。

しかし数十年前からその被害はピタリと止んだのである。


「アロハの悪魔を終わらせたのが、さっき見た魔技まぎってやつだな。」


「ちょっと待ってください、キラーゴブリンは魔法耐性もあるって・・・。」

「そうにゃ。」


「実はそれにはちょっとした秘密があってだな。そもそも魔法は何処から放つんだ?」


「それは当然・・・遠距離から補助的に・・・。」

「そういうことかにゃ・・・」


「あぁ、魔法は距離で威力が下がるんだよ。それでこれだ。」

その男性は下げていた剣を取り出し見せてくれた。

それはレノが使っていたスフィアブレットに似た物が柄に埋め込まれている。


「綺麗ですね!」

「だにゃ・・・。開発者は頭いいにゃね。」


「あの最強の魔法使い様が開発した武器だからな、当然威力もお墨付きだ!」


「待つにゃ!」


「どうした?譲ちゃん?」


「もしかして最強の魔法使いと交流がまだあるのかにゃ?」


「あぁ、当然。たまに来たりしてもらってるぜ。」


その言葉を聞いて少し安心したように微笑んだ。

もしかするとアイツに連絡を取れるかもという微かな希望を感じた私は、それだけでとても嬉しかった。

「どうした譲ちゃん。もしかして知り合いでも居るのか?」


「あぁ、一族に私の大切な親友がいるにゃ。」


「な、なんだと!?」

「えぇーっ!?」


「お願いがあるにゃ。」


「その親友に会いたいってことだろ?」


「そうにゃ。」


「無論、断る理由がねえよ!」


「ありがとうにゃ。」


「良かったですね。」

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