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私の豪運は家出用貨物船を届ける。

これは、私の一年の長きに渡る家出の物語だ。



あれは私が中学2年生・・・絶賛反抗期の頃だった。

小学生で大金を得た私はその後、ゲームに飽きてしまったので競馬、株でどこまでお金を増やせるかに挑戦していた。

無論それだけではつまらないので人工知能と勝負をしながら増やしていたため、

凄まじい速度でお金が増えていき・・・その国の長者番付一歩手前まで行ったのである。


その事を多忙な母親に報告すると何故か叱られたのである。

叱られたというか、その時母親は何とか私をさとそうとしていたのが今になってみると分かる。


「もういい!!お母さんなんか知らない!!」


「ちょっと待ちなさい!レノ!」


良い機会だと思った反抗期の私は、家出をしてみることにした。

最初はホテル住まいを満喫していた私だが、それも徐々に飽きて来ていた。


ある時たまたまタブレット端末でタンカーの動画を見ていた。

それは巨大な船が海を渡り世界中を巡るというものであった。



それになぜか感動した私は、それを運営している会社を買収したのである。

もちろん、世界中を巡るためだ。

家出をして会社を買収した私は一週間後、都内の巨大なビルの前に居た。


急ぎ足で駆け抜けていくサラリーマンを横目に中学生の私は巨大な建造物を前に感動していた。


「おー、ここが・・・すご・・・。」


私が感動してエントランスを歩いていると警備員らしき男に止められる。

「ここはお嬢ちゃんの来るようなところじゃないよ!!」


「は?私の会社なんですけど・・・。」


「ははっ。冗談はいけないよ!」


そのやり取りを見ていた、専務らしき男が向こうからやってきた。


「ようこそいらっしゃいました。レノ社長。」


「うむ。」


「えーっと。」


専務が警備員をにらみつける。


「す、すいませんでしたーっ!」


その様子を見ていた周りの社員達はざわつき出す。

「まだ子供じゃないか・・・。」

「まぁかわいい・・・。元社長の娘さんかしら?」


社長室に通された私は勢い良く社長椅子に座る。

家にあった椅子よりは質感が良くはないが我慢して座っていた。

普段見ることのできないビルの最上階から眺める景色はなかなかのものだ。


「んー。いい眺め」


「社長!ご要望のあった貨物船と必要機材等は揃えてあります。今すぐにでも・・・。」


「うむ。では向かうとしよう。世界へ!!」


その会社には10分ほどの滞在ではあったが社長気分を満喫できた。

だが・・・こんなところで一生を過ごすのは勘弁願いたいところだ・・・。


初のリムジンに乗り移動しながらタブレット端末を操作していた。

「知己、航行予定を見せて。」


「はい。現状のプランではシンガポールを抜けてペルシャ湾に向かいます。」


「おっけー。もう、母さんったら・・・何も分かってないんだから・・・。」


私は膨れながら窓から外を見ていた。

忙しく走る人、電話をしながら謝る人・・・彼らは私と違って努力をしてきた人たちだ。

そんな彼らを私は羨ましさを超えて、憎らしく思っていた。


その思いを何回か繰り返した後に車が止まり運転手から声をかけられる。

「社長、到着いたしました。」


「おー」


窓から見えたのは現代技術の集大成とも言える混沌とした港湾の風景だった。

ガントリークレーンが大きな音を立てて動き、コンテナが所狭しと並んでいた。


運転手が扉を開け、車の外に出た私は改めてその光景を見る。

そこにはタブレット端末で見た通りの巨大なタンカーサイズの貨物船が目の前に停泊していた。


「すご・・・」


船員らしき人たちがこちらに向かって手を振り歓迎してくれていた。

どこぞの大統領の気分だ・・・。


旅行用具の入ったキャリーケースを引き下げながら乗船する。

「どうぞこちらに・・・。」


「でっか・・・。」


私は貨物船の最上級の船室に案内された。

だが小さな窓があるだけで牢獄のような狭さを感じた。

「こちらがレノ様のお部屋になっておりますが・・・。」


「うーん」


「一応専務より、提案があった部屋も用意しております。」


「ふむ。」


そういうと船員はなぜか広い甲板の上へと向かう。

「こちらがその部屋です・・。」


「コンテナじゃん・・・・。」

甲板の上にポツンと置かれたコンテナの目の前に居た。

太陽光発電システムを備えたコンテナの周りには電気配線が施されており、生活設備は完璧なようだ。

船員が勢い良くコンテナの扉を開けるとそこにはベットやPC周りの必要機材が全て揃った部屋が広がった。


「どうぞ。」


「おー。ここにする。」

どうやらあの専務は優秀なようだ。


「かしこまりました。」


インターネット、エアコン完備そして何より備え付けの窓!

カーテンを開ければ大海原が目の前に広がる・・・人生で一番の極上空間であった。

その究極のワンルームでソファーに座りながらノイズに邪魔されることもなくその流れる海原を満喫していた。


「いい感じだー。家出最高!!」


そして飽きれば外に用意されたパラソルと椅子で大パノラマを見ながら気分転換をする。

グラスに入った青い飲み物を飲みながら、中学生からかけ離れていた生活を更に満喫していた。


「んー最高!!死んでも良いや!」


そして後ろから突然声をかけられる。

「では、介錯の方をお任せください。」


その声の方を見返すとナイフを構える屈強な女性がいた。


「は?誰?」


その女性はナイフを急いで仕舞うとお辞儀をする。

「これは失礼しました。私は社長のお世話をさせていただきます、アミと申します。」


「ふーん、よろしくね。」


「こんな世間知らずのガキが社長だなんて・・・。」


「あん?聞こえてるんですけど・・・・クビにすっぞ!」


「これは失礼・・。ガキ・・・社長殿!」


「絶対こき使ってやる・・・・・。」


それが私の師匠とも呼べる女性、アミさんとの出会いであった。



翌日、私は朝日を浴びようとカーテンを開けたときであった。

昨日、私に無礼を働いたお世話係が外で腕立て伏せをしている様子が飛び込んでくる。

「努力・・・。努力・・・。努力・・・。」


何かブツブツ言いながら腕立て伏せをやっていた。

「き、気持ち悪う・・・・。あ・・目があった。」


私の姿を見たそいつの大声が、2重の防音機能を備えた窓を貫通して耳に飛び込んでくる。

「おはよう!!御座います!!社長殿ーっ!!」


「うっさ・・・。」


その言葉を叫んだお世話係が窓から消え、コンテナの扉を開けようとする。

コンテナの扉が軋む音が響き、コンテナ全体が揺れていた。


「ちょ!ちょ!揺れてるんですけど!!」


「社長開けてください!!」


「おい!待てやーっ!」


「はい、待ちます!」


コンテナの揺れが収まったようだ。

「何だあいつ・・・未来から来たロボットかっつーの!」


パジャマから着替えようとした私だが、あることを思いつく。

「ちょうどいい・・・昨日、私を馬鹿にした罰だ。一生待ってろ。」


そう言うとパジャマ姿でPCの前に座り日課の株価をチェックし始めた。

「うーん、今日はまずますかなぁ・・・。」


タブレット端末から声がする。

「このままだと今日は私の勝ちですね。」


「くそがっ!負けねーよ。」


私は凄まじい勢いでキーボードを叩き、次々と株の銘柄を買っていく。

それに負けじとタブレット端末に銘柄情報がパラパラ漫画のように表示され続け、凄まじい勢いで売買通知が鳴り響いていた。


6時間に及ぶ人工知能とトレードバトルを繰り広げ、およそこの貨物船一台分の利益をあげた私は窓から水平線に沈む夕日を眺めていた。

「ふーっ、何とかギリギリ勝てたかな・・・。」


「はい、レノ様の圧勝ですけど・・・・。」


ソファーに座りながらメロンジュースを飲んでいた。

「お腹すいたなぁ・・・」


「なにか忘れているような・・・・。あっ・・・」


あの筋肉お世話係をすっかり忘れていたのである。

「まぁ流石に居ないでしょ・・・・見てみるか。」


私は恐る恐るコンテナの扉をあけて見る。

ゴゴゴ・・・


そこには膝を付いたまましゃがみこむお世話係の姿があった。

「おつかれ様です。社長!」


「もしかして、あれからずっと?」


「はい、この程度であれば余裕です。」


「は?」


「それでは失礼いたします。」


そう言うとその筋肉お世話係はコンテナに入ってこようとする。


「ちょ!ちょ!待って!」


「はい。」


「何しようとしてるの?」


「何と言われましても、お世話係ですから掃除の方を。」


そう言うと私の返事を待たずに入ってこようとする。

私がそいつの侵入を防ごうと体を張るも軽々と押しのけられそうになった。

「ま、待って!って聞けーっ!」


「と言われましても私も仕事ですので。些か不満ですが・・。」


そう言いながら部屋に入ると床に落ちているゴミを拾い集めだした。


「なんつった??不満??」


「えぇ。手の掛かる娘のお守りは大変だ・・・ということです。」


「何が娘だ!お前も母親と同じで・・・・、ふ、ふざけんなーっ!」


私はそのお世話係に殴りかかろうとした。


次の瞬間、私はお世話係に首を掴まれていた。

ゆっくりと私の体が地面から浮き上がる。


「私にもあなたぐらいの娘が居るのですが、あなたほどひどくはありませんよ。」


「ぐっ・・・・ふ、ふざけるな!しゃ、社長に向かって・・・・。」


「えぇ。私はあなたのような世間知らずのガキを社長と認めません。」


「このっ・・・。」

私の首を掴んでいるそいつの腕を両手で握り返すも、ビクともしなかった。


「あなたのようなガキを持って、母親はさぞかし不幸でしょうね・・・。」


「お前に何が・・・わかる・・・・っ・・・」


そこで私の意識は途絶えた。


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