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第2話 皇后の頭痛の種2


「あの馬鹿息子のせいで目を掛けていた令嬢達は脱落してしまったわ。しかも、言うに事欠いて『母上が選んだ女狐との結婚は御免被ります』と宣ったのよ」


「見合いがダメならいっその事出会いを用意してみては?」


「出会い?」


「はい。王家に連なる高位貴族の令嬢がお気に召さないというのなら、まずは側妃から選出しても良いのではありませんか?」


「側妃を?」


「はい。勿論、正妃になられる方に失礼のない令嬢(己の立場を弁える女)を選別いたします」


「……ヒューゴ、幾ら己の分を弁えた令嬢でも子供ができれば変わるわ。権力に興味を持ち、我が子が優位になるよう画策する。例え、控えめで正妃を立てる事ができる側妃だったとしても腹の内は違うわ。寧ろ、正妃を後ろから刺す行為を平然と出来るようになる。それが後宮の女というものよ」


 皇帝の寵愛を競い合うと同時に妃同士の諍いは常に起きているもの。クロヴィス皇帝の後宮には目を光らせている。私の許可を出した者しか入れないように誘導したからまだマシだけれど。先代皇帝の後宮は本当に血みどろの戦いだった。あの頃は新参者の側妃に過ぎなかった。幾ら寵愛が厚いからといって他の妃達が手を緩めてくれるかと言えばそうではない。逆に標的にされた。もしも、私が産んだ子供が女児(王女)でなければ、母子ともに始末されていてもおかしくなかった。


「それならば、子が孕めぬように手配いたしましょう」 


 当時の私を知るヒューゴが対策を立てる。


「腕のいい薬師なんでしょうね」


「勿論です」


「それならいいわ」


 紅茶をすすりながら同時に溜息も飲み干した。


 



 側妃候補たちとの出会い。

 その結果、全滅に終わった。


 ある令嬢の家がとある高位貴族の家に紐付きになっている事が発覚し、その過程で汚職問題の関与が疑われた。

 別の令嬢は屋敷の使用人と道ならぬ恋におち、家族中で大騒動になっている。

 更に別の令嬢は舞台俳優に夢中になった挙句に未婚の身で妊娠して、家が慌てて別の男を用意したらしい。


 その他にも色々、本当に色々あった。


 

アレウス(馬鹿息子)を連れてきなさい!!!」



 堪忍袋の緒が切れた。

 令嬢達やその家の不祥事がこの時期に起きたのには間違いなく馬鹿息子が関係している。調査結果は「白」と出ていたがこの母の目は誤魔化されはしない!


 



 

「やってくれましたね、アレウス」


 母親の怒りを前にして暢気に菓子を食べる息子の図太さには呆れを通り越して感心してしまう。


「何のことですか? 母上」


「今、下位貴族で起きている騒動のことです」


「ああ、何だか大変な事になってますね」


「何を他人事のように」


「他人事ですから」


「飽く迄も、自分は関係ないと言うのね」


「おや、まるで今回の騒動の原因が私にあるよう言い方ではないですか」


「貴男が原因で起きていると母は確信しています」


「はぁ~……。なんとも嘆かわしい。実の息子を信じてくださらないとは……」


「貴男には()()がありますからね。到底、信じられません」


「とんだ濡れ衣です」


 やれやれと言わんばかりに首を左右に振るアレウス。

 この貴公子然とする見た目に騙されてはいけない。

 今でこそ、優雅な立ち居振る舞いを身につけているものの、根っこの部分が幼少期と変わらず「やんちゃ坊主」である事を母親である私が一番よく知っている。


 





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