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第19話 将軍の頭痛の種2

 給料分の仕事はする。しかし……この仕事を受けたのは間違いだったと心底思った。もっとも、あの宰相相手に「否」の返事はできなかったけどな……。


 皇太子とアンベール伯爵家の倅。

 二人の会話は皇太子の旅目的についてだった。


 ていうか、アンベール伯爵家の倅は知らんかったのか? 旅の目的を。ああ、きっと皇太子のトンデモナイ行動ばかり見てて麻痺してるんだろう。なんせ、長い付き合いだからな。その気持ちは分かる。俺も時々忘れるからな。



「将軍、皇太子殿下は本気なのでしょうか?」


()()皇太子が口に出したんだ。本気だろうぜ」


 良くも悪くも有言実行の皇太子だ。

 皇太子が語った『理想の女性』。


 なんだかな……少年の青臭い理想と中年のエロオヤジの理想が入り混じった感じだぜ。どっちかにしとけよ!

 しかも、文武両道に秀でた女ってどんなだ? その上、絶世の美女って……英雄ものの小説でも読んだのか? 皇太子のトンデモナイ理想論を聞かされたアンベール伯爵家の倅はさっきから一言も話さない。まあ、黙りこくるしかねぇわな。女に関して無知どころか玄人も裸足で逃げるような皇太子が何言ってやがるんだか。


 でもな。

 皇太子の『理想の女性』。

 それに近い存在を知っている。


 カサンドラ皇后だ。

 

 裕福なブルジョワ階級出身とはいえ平民の身分で皇后にまで伸し上がった究極の下剋上女。己の美貌と才知のみを武器に現皇帝を皇位に就けた稀代の女傑。四十をとうに過ぎているというのに何時までも若さを保っている美魔女だ。


 母親である皇后を毛嫌いして反発ばかりの皇太子……実はマザコンだったんだな。


 でも、まあ……それも仕方ねぇか。

 あんな強烈な母親持っちゃあな。他の女が物足りなくなるってもんさ。


 ……皇太子、知ってんのかね? 

 皇后が自分の行いを苦々しく思っている一方で思い通りに動かない息子を将来有望と見ているのを。正論を口にしながら息子の行動を先読みして国益に繋げている事を。皇后(母親)の掌の上で踊っているって事実を知ったら荒れるだろうぜ。

 そもそも、皇后(母親)と違って素直に懐いている宰相(叔父)の掌でもコロコロされてやがるからな。この無鉄砲な旅も何らかの意図があるんだろうぜ。







『皇太子の護衛になれば給料は今の三倍だそう。仕事の出来次第ではボーナスもでるけど、どうする?』


『乗った!!!』


 宰相の提示した報酬に乗った結果だコレだ。

 上手い話には裏があるとはよく言ったもんだ。

 


 帝国一の問題児……いやいや、そんな優しいもんじゃねぇ。帝国随一の悪童はやることが滅茶苦茶だったぜ。もっとも、その悪童を利用して政敵を次々と失脚させて政界を牛耳っていく皇后と宰相の姉弟も凄まじかったが。


 俺からすると訳が分からん位に優秀な姉弟だ。


 そんな母と叔父を持った皇太子が優秀じゃない訳がない。

 きっと頭の構造自体が他と違ってんだろうな、と思える程だった。何百回も厄介事の片棒を担がされたし、時には囮に使われた事さえあった。文句を言おうにも「だから臨時ボーナスをだしているでしょう?」と言われて終いだ。皇太子の護衛が長続きしない理由は間違いなく「命の保証なし、時に奇跡の生還になる」が追加されていたからだろうぜ。


 今は護衛を外れて将軍なんて地位に就いてはいるが、はっきり言って宰相の便利屋って地位だとつくづく思う。

 

 そして今回もまた何かが起きる予感しかしないぜ……。

 この嫌な感覚は一体いつまで続くんだ……。

 俺は思わずため息をついた。



 願わくば平穏無事に帰還してぇ。


 ま、無理だろうがな。


 




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