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カノンと土の塔  作者: 一ノ瀬一
第1章 入学編
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第6話 固有魔術研究会

 アンドレ先輩と魔術戦をした翌日の放課後は研究会見学期間の初日だったため、一年生への研究会勧誘で教室の周りは上級生でいっぱいだった。

「炎属性はやっぱり炎属性魔術研究会! 伝統ある研究会で過去に炎の塔に入った魔術師も在籍!」

「君、水属性かな? それなら水属性魔術師育成研究会! 魔術師育成のノウハウがしっかりしてるから入れば成長間違いなし!」

 今教室を出たら勧誘に捕まって時間がかかりそうだと思っていると、同じことを思っているのか帰らずにいるシルヴィから話しかけられる。

「カノンどこか行きたい研究会ある?」

「……特には」

「じゃあ決まり。今日はあたしと一緒に適当な研究会行こう──もう少し経ったらね」

 さすがに上級生も勧誘のために教室まで入ってはこないのでただ待っていればいいかと思ったところで、昨日と同じようにアンドレ先輩が遠慮もなしに教室へ入ってきた。

「昨日、試合の後に研究会への勧誘をする予定だったんだが……俺があまりにも満足してすっかり忘れていた。今から研究会の活動を見学してもらいたいんだが、時間はあるか?」

 私がシルヴィの方を見ると、彼女は小さくため息をついてから口を開く。

「行こうカノン、今日断ったら絶対明日も来るから」




「ここが俺が入っている土属性固有魔術研究会の部屋だ。基本的にはここに集まって活動している」

 案内された部屋には話し合いのためのテーブルや椅子が置いてあり、他のスペースは本棚で埋められていた。動ける面積は少ないが、テーブルの上は整頓されていたし、本棚に収まっている文献は整然と並べられている。

(いきなり初対面の相手に魔術戦を申し込む先輩の研究会にしては、意外とまともそう……かな。)

「固有魔術ってなんですか?」

「格式ばった言い方をしているが、要は新しい魔術を作る研究会だな。活動は──」

 飛び込んできた「新しい魔術」という言葉に心を奪われて、後の説明が頭に入ってこなくなる。もともと「新しい魔術のヒントを探すため」というのが学園に来た目的の一つだった。それなら、この研究会は私にぴったりじゃないか。

 遥か昔から人は魔術を使いつづけてきたのだから、本当に新しい魔術などそうそう見つかるものではない。私の雷属性は例外として、他の属性で新しい魔術が発表されたのは十年以上前だと聞いたことがある。それを学生のうちから目指すなんて、なんと志の高いことか。

「……入ります」

「え?」

「……私、この研究会に入ります」

「カ、カノン!? 研究会は他にもあるんだし、今決めなくても……」

「本当にいいのか? 入ってくれるのは嬉しいが、他の研究会も見てからにした方が……」

 シルヴィだけでなく、勧誘した張本人のアンドレ先輩まで止めようとする。

「それに新しい魔術を期待してるところ悪いんだが……うちの研究会ではまだ新しい魔術を開発したことはないし、出来る気もしない。だから嘘だと言われないように『固有魔術』って名前なんだ。努力はしているが、やっぱり新しい魔術なんてそうそう作れるわけもなくてな」

「でも努力はしてるんですよね?」

「……まあ」

「じゃあ入ります」

「その気持ちは嬉しいんだが……まあどちらにしろ正式に研究会に入れるのは見学期間が終わってから。それまでにせめていくつか研究会を巡ってくれ。カノンを頼めるか?」

 そう言ってシルヴィの方を見るアンドレ先輩。シルヴィに私を連れて研究会をしてくれということだろう。

「分かりました。私も心配なので」

 私はただ研究会に入りたいと言っただけなのに、こうも心配されるとは心外だ。説明だってちゃんと聞いて……聞いて…………ないかもしれない。

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