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カノンと土の塔  作者: 一ノ瀬一
第2章 定期テスト編
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第14話 テストに向けて

 術式をカノンに変えてもらってからシルヴィは毎日練習を重ねていた。

「土よ、弾となりて、飛べ! 土よ、弾となりて、飛べ! 土よ──」

(撃てば撃つほど魔術が馴染んでいくのが分かる。こんなに練習したのも、練習が楽しいと感じたのも初めて! せっかくカノンが私のために術式変えてくれたんだから、絶対テストまでに仕上げてみせる!)

 カノンに教えてもらった魔術は日を追うごとに精度が上がっていき、カノンやパスカル殿下のように的の中心を捉える回数もどんどん増えてきた。

 だんだんと初速の速い弾をどう制御すれば真っ直ぐ飛んでいくのか、どう制御したときに曲がってしまうのかが分かってきて、もう少しでこの魔術を自分のものに出来そうだとなんとなく感じていた。しかし、テストの日はもうすぐそこまで迫っている。ものに出来たとしても、それがテストの後では意味がないのだ。

 テストで成功させて周りに魔術で秀でていることをアピールしたいという気持ちももちろんあったが、今はそれよりもカノンの気持ちに答えたい──カノンに認めてもらいたいという気持ちの方が強かった。

(あたしはテスト本番でこの魔術を絶対に成功させたい……そうしないともうカノンの隣に立っていられない気がする。)

 おそらくカノンはこの中間テストで学年一位を取るだろう。ならばせめてあたしも学年で一位とはいかなくとも一桁の順位を取りたい。

 もしその順位が取れたとして本来のあたしの力で取ったものではないけれど、それでも学年首席の力を借りてそのくらい取れないのではカノンに示しがつかない。

そのためには的の中央に当てることは最低条件だ。もっと……もっと練習しないと!

 空が茜に染まりタイムリミットが刻々と迫っているのを感じながら、シルヴィは途切れることなく詠唱を続けるのだった。


 * * *


 私が術式を改変してあげてから、シルヴィは毎日放課後すぐに練習場へとすっ飛んでいくようになった。練習場の隅から様子を見ていると、真剣な眼差しで的を見つめたまま何度も何度も魔術を発動させていた。

 そうだ、最初の授業で目立ってしまって実力を抑えることを考えていたけど、私も同じ学園の生徒でありテストを受ける身。ならたとえ本番で実力を抑えるとしてもテストに向けて研鑽を積むのは生徒としての義務だ。

 シルヴィが教室を出て行った後、私も練習場へと向かいシルヴィとは反対側を陣取る。まずは一度魔術を使って感覚を確かめる。

(今はこのくらいの速さで、ほぼ確実に的の中央に当てられる。ならもっと速度を上げてみようか……シルヴィと同じように加速部分を私も弄って、と。)

「土よ、弾となりて、飛べ」

 詠唱を終えた瞬間、以前よりも速い土の弾がヒュンと空を切って飛んでいき、的の真ん中からやや逸れたところに当たる。

(さすがに速くしすぎて制御しきれなかった……今度はもっと丁寧に術式を組み上げよう。)

 じっくりと時間をかけながら丁寧に術式を組み上げ、詠唱もひとつひとつの単語を噛み締めるようにゆっくりと行う。すると同じ勢いの弾が発射されるが、今度は正確に的のど真ん中を弾は捉え、カーンと気持ちのいい音を響かせる。

(やった……! でもテストでこんなに時間をかけてたら失格になるかも……というかこれを百発百中になるまで練習しないと。魔術の練習はきっと土聖の仕事の一つだから少し帰るのが遅れても大丈夫、かな。もう少し練習してから帰ろうっと。)

 ものすごい速度で弾を発射するカノンは周りの注目を浴びていたが、そんなのおかまいなしに当の本人は納得のいく改変ができたことへの喜びから何発も繰り返し土弾を撃っていた。精度は保ったままもっと発動までを早く、早くと。

魔術の練習に夢中になりすぎたカノンが空が赤くなってから慌てて塔へと帰ったのはまた別の話。


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