犯罪者は異口同音に自供する
「ごめん、ごめんなさい、本っ当~に、すみませんっ!」
「それじゃわかんないよ」
「ねぇねぇ、どして~☆」
AIがこちらのオーダーどおり正確無比に生成し、3Dプリンターで出力されたのは、オレが小説投稿サイト『文筆家になろう』に連載設定で投稿し続けている、『絶望こそが蜜の味』シリーズの主人公、天野カンロちゃん。
このキャラクターには、モデルがいる。
って。 …… と て も 言 え な い 。
「じゃ、こうしましょ」
黙秘を続けるオレに見切りをつけて、行方さんは魔法少女の頭を『ポン』と軽く叩いてから、指先でモニモニ猫耳の感触を確かめつつ話しかけた。
「カンロちゃんは机とベッドを修理する」
「魔法でチョチョイ、カンタンです~☆」
☆*:. ぽわぁあん .:*☆
「じゃカンロちゃん、変身を解いてみて」
「スケレラータ ソール オリートゥル☆」
☆*:. しゅわぁん .:*☆
アルビノや猫耳など、後付け設定や付属品が消滅。
身長が3センチ小さい行方さんになってしまった。
ただし、服装は魔法少女のまま。
行方さんの耳が真っ赤に染まる。
「残る問題は、作者様の返事次第だよ?」
「市中引き回しの上、磔、獄門ですか?」
「JSが頻繁に出入りしたら、それこそ警察に逮捕されるでしょ。カンロちゃんは私の家で預かる、これだけ似てたら大丈夫。だから理由を説明してよ」
行方さんはニッコリ微笑んだ。
「どして、そこまで」
「そりゃあ。3Dプリントを頼んじゃったの私みたいだし。千円チョイが安くてもお小遣い一か月分じゃ足りないし、ノートパソコンまで爆発しちゃって壊れたし。自作品のキャラで試すのが普通でも、出てきたのは私のソックリさんよ?」
「本当に、すみませんでした」
「そりゃ不思議に思うでしょ」
不思議に思う、その程度?
不気味とかじゃないのか。
よし。
まだ薄っすらと煙の漂う部屋を進んで、窓をカラカラ開いた。
新鮮な空気が流れ込んでくる。
「たぶんだけど、これだけ正確な3Dプリントをするには情報量が足りなかった。海外のソフトウェアだからインストール手順は英語ばっかり、とにかく先に進めるために[ I agree ]、同意しますを全部押してる。こっちのパソコンにあるデータをネット経由で閲覧された、その負荷に耐えられなくて、爆発したんだと思う」
「パソコンのデーター?」
斜め下を指差すと、二人は首を傾げた。
「うちの近所の学習塾に通ってた女の子」
「そこ、小学校のころ通ってたとこだよ」
「それが、カンロちゃんのモデル」
「そりゃ、まぁ。一目瞭然としか」
「ここから、ま、そのぉ。 ……盗撮を」
「 「 げ 盗撮 」 」
「かわいかったから……つい、出来心で」
「恋心で取る行動ではないわね」
「カッとなって、やりました……」
「あのねぇ、犯罪者はみんなそう言うよ」
行方さんは「ふ――」と、細長い溜息を吹いた。
そして、小声で「その手があったか」と呟いた。
珍しく眼鏡をかけてパソコンの残骸を調べ、「こりゃダメかなぁ」と嘆息して、パタンと閉じてから、机の上へ丁寧に置いた。
カンロちゃんに「これ修理できる?」と尋ねると「機械は苦手なんです~☆」と両手でバッテンマークを作ったので、も一度「ふぅ」と小さな溜息をついた。
眼鏡を外してケースにしまう。
天井を見上げて、「あ?」と小さく口を開いた。
「ところで、このカンロちゃんってさぁ」
「なんでしょうか?」
「恥ずかしい攻撃ばっかりされてるよね」
「そうでしたっけ?」
「昨日は敵の触手が服の中に入ってたよ」
「そんな破廉恥な! ……記憶が曖昧で」
ん?
スマホでなにを……やっぱり通報案件?
「えーと、ぬらぬら濡れた触手が何本も入り込み――
「えぇえ~☆ カンロ、どうなっちゃうんですか?!」
「わーわーわーすみません<R15>じゃなくって!」
「これで年齢制限かけないのは、見上げた根性だよ」
返す言葉もない。
凌辱されているのは2年前の行方さん。
あろうことか、今日は御本人までいる。





