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オオイヌノフグリ
君をどうして好きになったのかな
たしか最初に見たのは
まだ新しいにおいがする本の中
君はきれいな青色で
僕はくぎづけになったんだ
好きな花をひとつ見つけて
ノートに描こうと先生が言った
校庭の隅で見つけたとき
体が空に引っ張られて
少し息が止まって
吐き出すと元に戻った
僕は迷わなかったよ
すぐに君のそばに座って
なるべくそのまま描いたよ
それからしばらくは
君よりかわいい花を知らなかった
いちばん好きな花を聞かれて
君の名前を答えたら
みんな知らない顔をした
そんなことも忘れて大人になって
今いちばん好きな花は
君より少し後に咲く
まぶしく光る白い花
あんなに君が好きだったのに
嫌いになったわけじゃないのに
いちばんに出てこなくなった
だけどよく晴れた公園で
久しぶりに君を見かけたら
体が空に引っ張られた
君は何でもない足元で
小さく揺られていた
僕は顔を近づけて
ただいまとつぶやいた
僕が最初に好きになったのは
風に飛ばされそうな青色の
こわれやすい花だった




