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金曜日になるまで
耳をつらぬくスクリームで
天井まで飛び上がった
まるでなかったような時間が
今は何より恋しい
早くベッドから出ておいでと
キッチンから声がする
まるでなかったような時間に
恋したことがない声で
あともう少しこのまま
金曜日の夢を見ていたい
帰り道に微笑み落として
なるべく眠らず過ごすんだ
土曜日は遅めの朝食
夢の残り香たずさえて
羽を広げて飛びまわり
カゲロウみたいに消えていく
日曜日は哀れな仔羊
狼が来ると知っていても
逃げずに伏せて待っている
もうほとんど月曜日
春の濁った海の中へ
鉛を飲んで沈んでいく
金曜日になるまで




