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汽笛が聞こえたら
汽笛が聞こえてきたら
風のように窓をすり抜け
スズメのようにベランダを跳ね
ハトのように街の上を飛び
カモメのように港に降りた
今日も青い空
青い海だった
子供の頃から特別だった
あの海が広がっていた
憧れと恐れが混ざった
あの海が広がっていた
それが今はほら
テーブルの上に
君が広げたおにぎりのラップ
あの日の水面のきらめき
少しピントをずらしたら
もっと水面に近づいた
いつまでもそのままでいてくれる
あの海が広がっていた
変わりゆく世界の向こうに
あの海が広がっていた




