826/866
最後の物語
そよ風が吹くたびに
消えてしまいそうな炎
何もない白い部屋で
まだ今日も揺れている
この寂しさはいつか
もっと強くなって訪れる
何度もそう感じた
今 その寂しさの中
安らぎより痛みを
永遠より今を
あなたが愛した物語を
もう一度たどるため
窓辺に置いた本が
琥珀色に染まる時刻
そっと手をのばし思う
まだ今日も燃えている
運命に身を任せ
天井の模様を眺めている
何度も波を越えて
今 この静けさの中
苦しみより光を
後悔より今を
あなたと過ごした長い日々を
もう一度たどるため
あなたが愛した物語を
もう一度たどるため




