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パンジー
バスが来るまでのあいだ少し歩かない
パンジーの花壇までならと君が言った
暖かいはずの3月の終わりなのに
冷たい手が袖の中で丸くなってる
また会えるよね
そう言おうとしたとき
蝶々が飛んだ
出会った日からわかっていた
移り気だってわかっていた
もう別の人追いかけてるから
花壇の前で立ち止まっても
デイジーだって気づかないの
バスが出るまでのあいだ横顔を見てた
一度手を振ったきり目を合わさない君
もうすぐバスは夕焼け空に消えていく
思い出にいらないすべてのものを乗せて
もう会えないね
これ以上は枯れない
ドライフラワー
出会った日から決まっていた
終わりが来ると決まっていた
もう傷つかないと思いながら
花壇の前で立ち止まったら
パンジーだって咲いていたの




