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春の終わりの港には
春の終わりの港には
はじける前の静けさだけ
哀しく漂っていた
幾人かを乗せて走る
派手な色のコンバーチブル
二人のそばに止まった
恋人たちはキャンドルライト
騒ぐ彼らはスモールランプ
それぞれ壊れそうな夢を抱いて
夜に浮かんでいた
明日になれば今日なんて
散らばる星の瞬きより
遠くにまぎれてしまう
揺れる水面に映るのは
過ぎた日々でも未来でもない
今が息づいてること
はかない色のキャンドルライト
孤独に寄り合うスモールランプ
それぞれ寂しい予感を抱いて
夜に浮かんでいた




