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鳴かない鳥
鬱蒼とした森の中
ひとり静かに生きてきた
隙を見せないように
しっぽを出さないように
霧立ち込める森の中
ひとり無難に生きてきた
傷つけられぬように
撃たれてしまわぬように
鳴かない鳥は殺されない
そして誰にも縛られない
月も見えない森の中
時折 甘い夢を見る
とうに諦めたのに
今更もう遅いのに
鳴かない鳥は殺されない
だけど誰にも気づかれない
空の色を忘れて
海のにおいを忘れて
鳴かない鳥はいつしか
鳴き方さえ忘れてしまった
鳴かない鳥は殺されない
だけど誰にも愛されない
鳴かない鳥は殺されない
だけど誰にも救われない




