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夕景色
川べりに腰かけて
笑いかけないで
風に身をあずける
僕は夕焼けの案山子
さっき木陰であの子を
抱きしめていたね
知らないふりをして
しばらく話し続けた
軒下に降った雨が蒸発するように
夢はゆっくり冷めていく
うつろう夏の光は
誰にも止められない
君と会うのはこれきり
嫌われる前に嫌われる
二羽の鴨が並んで
海へ漕いでゆく
きっと思い出して
帰りたくなるけれど
読み終えた物語にときめかないように
夢は再び見られない
川向こうの家も山も
セピアに染まってゆく
なぜ涙が流れるの
墨色空が優しくて




