349/866
atelier [アトリエ]
小さなアトリエ
誰も来ない花園
小鳥のさえずり
春を告げている
藤棚のテラス
白いテーブル越し
あなたとキスした
遠い記憶
もういないあなたの
描きかけのポートレイト
色が思い出せなくて
永遠にモノクローム
まだ冷たい風
肌を吹いていく
時折あたたかい
緑の予感
庭は季節ごとに
違う顔を見せる
いつも新しい
私になれる
愛をくれた瞳で
見つめてくるポートレイト
映り込んでいた光に
永遠がのぞいていた
いつまでもあなたを
描き続けていたかった
色が思い出せなくて
永遠にモノクローム
涼しげなキャンバスに
これから何を描いてゆこう




