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スケッチブック
秋のにおいが喫いたくて
車の窓を開けた
笑いあった時間が
昨日のことのよう
台風が去った後は
透き通った空になる
君が遠くへ行く日も
こんな夕映えだった
ミュージアムの帰り
古いスケッチブックが
風でめくられ紙芝居
君と丘にのぼった
緑のページで終わってる
最後の日に振り払った
厚い手がいとおしい
凪の海にボートが
ひとつ浮かんでいた
ミュージアムの帰り
誰もいないシートに
愛しているとつぶやいた
まだ幼い頃の
君がそこにいる気がして
いつも素直だった
君がそこにいる気がして




