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レコードをまわして
埃まみれの本棚
ぼんやり眺めていたら
懐かしいレコードが目にとまった
いたるところが破れて
そこを直したテープは
あの日からすでに琥珀色だった
優しく指でつかんで
針を落としてみる
まわりだすレコード
同じところでおかしくなる
思い出せずにいた曲が
今始まろうとしている
買ってやったその日に
クレヨンで落書きした
父がそう嬉しそうに語った
優しい絵とひらがなが
夢を見せてくれた
裏返すレコード
いつも父にお願いしてた
なぜか寂しかった曲が
今始まろうとしている
まわりだすレコード
部屋にいても旅をしていた
あの日寂しかった曲は
今聴いても寂しいまま




