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今なら天使のように
あたたかい胸を
忘れたわけじゃない
大きな手のひらを
忘れたわけじゃない
だけど だけど
苦しかったの
あの日生まれてはじめて
絶望を覚えた
曇った空が優しいのは
きっともうお別れだから
鳥にもなれず
風にもなれず
もう目覚めることはないのね
誰も止めないで 今なら
天使のように飛び立てる
気づいたらどこかの部屋
あちこち痛かった
鼻をすする音が聞こえる
ずっとみんながいたのにね
もう雨になり
もう霧になり
ただ消えてしまいたかったの
何も見えなくてあのとき
天使のように飛び立った
あたたかい胸に
いつでも帰りたい
大きな手のひらを
いつでも握りたい
だけど だけど
苦しかったの




