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氷砂糖
朝ドアを開けたら
うつむいた誰かが
膝を抱えていた
入るかと聞けば
そのまま何も言わず
ただ頷いた
コーヒーを入れても
頭を下げるだけ
窓の外で揺れる
木の葉眺めてる
なぜかこの沈黙が
心地よかった
こんな真夏の日に
白い長袖
何も食べてないと
お腹がつぶやく
何もない家の中
探しまわった
君が不意に置いた
一枚の写真
少し色褪せてた
昔一度だけ
訪れた動物園
手をつないでた
あのときの君なのか
涼しげに光る
白い氷砂糖
とけないように
ひとつ君の手のひらに
そっと逃がした




