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僕が消えても
忘れかけた何かを取り戻すように
ホテルの窓をのぞいた
カラスが一羽 空を舞い
どこからかもう一羽
追いかけるように飛んでいく
いつも同じでいることに
疲れたのかもしれない
僕は僕でない気がする
どんな人にもなれる気がする
きっとこれからも僕は
誰かのように生きるだろう
冷たい風をおもいきり吸い込んだら
水もおいしく感じる
逃げるように街を離れ
今だけ人のいない
どこかで呼吸がしたかった
本当のことが言えなくて
疲れたのかもしれない
僕はなぜここにいるのか
僕が消えても世界は残る
きっとこれからも僕は
そんな恐れと生きるだろう
僕は僕でない気がする
どんな人にもなれる気がする
きっとこれからも僕は
誰かのように生きるだろう




